不明な部分は多いが……

MVNOに関してはSprintとT-Mobileのネットワークを利用するという話以外、料金プランや具体的な提供時期など実際に不明な部分は多い。だがWSJの報道には興味深い点があり、今後の戦略を示唆するような部分がみられる。

例えば、Googleは同プロジェクトの準備に2年を費やしており、その目的はGoogle Fiberと同じ「ユーザーにもっとインターネットを利用してもらう方法の模索」にあるという。もしファイバー回線の敷設が「回線速度のボトルネックによるサービスの限界打破」だとすれば、Googleの携帯事業参入の目的は「高止まりする料金と通信容量制限によるユーザーの積極的阻害を打破する」ことにあるのだとも予測できる。

携帯料金の従量制はユーザーの積極的利用を阻害する要素ではあるが、一方で携帯キャリアは「1カ月5GB」のような単位で大量のデータ通信契約を売り込もうとすることに躍起で、ユーザーは必要以上にデータ通信を買い込んで結局損をするケースも多いだろう。「家族共有プラン」や「データ通信容量のロールオーバー」制度といった付加サービスはこの過程で生まれてきた。最少支払い額を少なくできる一方で、多く使ったときには相応の支払いが必要になる従量制の採用は、"利ざや"をできるだけ大きく稼ぎたいキャリアへのアンチテーゼとなる可能性はある。

もう1点興味深いのが「Wi-Fiの積極活用」で、データ通信も携帯通話も積極的にWi-Fiオフロードを活用していく計画があるという。都市部でWi-Fiカバー範囲内、あるいは自宅やオフィスでWi-Fiアクセスポイントを設置している場合、ほとんどの時間帯はWi-Fiカバーエリアにユーザーが滞在しているため、(生活時間全体でいえばごくわずかの)移動時間で消費されるデータや通話においてのみ、前述の従量制通信が適用される。

結果としてWi-Fi活用で通信料金を大幅に押さえ込めるという考えだ。これを大胆な形でサービス化したのが米Cablevision SystemsのWi-Fi携帯サービス「Freewheel」で、携帯ネットワークを使わずにWi-Fiホットスポットのみで通話からデータ通信まで利用可能となっている。

米Cablevision Systems COOのKristin Dolan氏。MWC 2015にて

同社COOを務めるKristin Dolan氏がMWC 2015で説明したところによれば、「移動中でWi-Fiがつながらないと困る時間はごくわずかで、契約ユーザーはその多くの時間をWi-Fi圏内で過ごしている。サービスが使えない時間については(安価な)料金との兼ね合いで割り切って考えるべき」だという。

実はCablevisionのサービス参入前に、2014年夏ごろにGoogleが米ニューヨーク地域で同種のサービスを提供するとの噂が流れており、おそらくは当時のプランをさらにブラッシュアップしたものが新規参入のMVNOなのではないかと筆者は予測する。