個性あふれるクレイジーケースチーム。社内では、矢野氏(中央)は"クレイジーケースの生みの親"、パトリック氏(右)は"海外交渉請負人"、大田原氏(左)は"バンダイのバズらせ屋"の通り名を持っているという |
――確かに。これだけクオリテイが局いなら、飾っておきたいとも思えます。
矢野:ただ、やはり一番はiPhoneに装着して持ち歩いてほしいです。例えば会議や飲み会の時に机の上に置いておく。そういうシーンでも、普通のケースよりも絶対「バットモービル」や「デロリアン」の方がかっこいいのは問違いない! 取引先でさりげなく出したら、「おおっ! ってなりますよ(笑)。営業の話のタネとしてもぴったりじゃないでしょうか。
――「バットモービル」が出てきたら「えっ!?」っと驚きますね。
矢野:でしょう! しかも光ったり動いたり音が鳴ったりしますからね。めちゃくちゃかっこいい!
ギミックへの情熱とこだわり
――そのギミックについてもお聞きします。身も蓋もないことを言ってしまうと、触っていて楽しいけれど、iPhoneケースとして必要なギミックではないですよね。どうしてケースにギミックをつけようと?
矢野:人によっては無駄だと思うかもしれませんが、このギミックこそが「クレイジーケース」の真骨頂です。私が原作映画の大ファンということもあり、ファン目線ならここを再現してほしいと思う部分を突き詰めました。
例えば「デロリアン」なら、ワープの発光ギミックは絶対に必要なんです。造形的に「ミスターフュージョン」(突出した原子炉)はなくした方がいいという話も出たのですが、それじゃダメなんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』ではミスターフュージョンがゴミ箱になっていて、あそこに燃料を入れるのが良いんですよ! だから絶対残しましょうと押し切りました。
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――情熱が伝わってきます(笑)。
大田原:ちょっと変わったケースだけなら他にいくらでもありますが、ここまで精巧に再現しつつ、これだけのギミックを取り入れることは技術的にもバンダイにしかできないことだと思います。これまでに玩具で培ってきた企画やデザイン、設計などの技術を注ぎ込みました。
――ギミックで苦労したことはありましたか?
矢野:iPhoneケースとしての仕様上、仕方なくあきらめたこともあります。「デロリアン」のボンネットは、普通の車と逆で前に向かって開く。なので商品でもそういうギミックをつけて、開いたところからカメラを出そうとしたのですが、どうやってもiPhoneの写角と合わない……これは泣く泣く断念しました。
――ここまで趣味性の強い商品なら、いっそのことカメラ機能は無視するという案はなかったのですか?
矢野:それはダメです! なぜなら、そんなケースを私は使いたくないですし、造型だけなら弊社でなくても作れます。これだけのギミックを搭載していながらも、きちんとカメラが使えて、指紋認証もできて、操作しやすいiPhoneケースにしたかったのです。
パトリック:他にも、ヘッドライトを光らせるためのアクリルパーツが入っているのですが、普段はこいつがカメラを覆ってしまっているんですよ。だからカメラを使おうとしたらアクリルパーツをスライドさせて開けてやらないとダメです。この調整が本当に大変で大変で……。
矢野:できた時は感動したよね。できたーーーーーーーー!!!!! って。
大田原:iPhoneの底面もきちんと空けてあるんですよ。イヤホンやLightningケーブルと干渉することなく使えるんです。
パトリック:「バットモービル」の方も iPhoneを固定しているバックルにこだわっています。ホームボタン部分を空けてあるのですが、そうすると指紋認証するのに指が届かない。そこで、ホールの縁を斜めにカットすることで指が入るようにして、バックルをつけたまま指紋認証できるように調整しました。
矢野:この径を調整するのがめちゃくちゃ大変で……。
パトリック:何度も直しましたよね。
――そこまで苦労しても付けたかった、と。
矢野:欲しいでしょう! 「iPhoneを守れ!」みたいな。
大田原:僕らは考え方が基本的にボーイズトイだよね(笑)。
矢野:後はケースをつけたままコントロールセンターを呼び出せることも、かなり苦労しました。iOSの仕様で、こちらからはコントロールできないこともたくさんあります。
――そこはもう、どうしようもないところですよね。
パトリック:企画が動き出したときは、iPhone5用に開発していたのですが、その後iPhone6が出るという話になり、改めて開発し直しましたからね。
矢野:やっぱりiPhone6でしょうと。でも単に拡大すればいいわけじゃなくて、中の構造からすべて変更しないといけなくて、これもすごく大変でした。
大田原:苦労話は尽きませんね(笑)。