――Vivaldi Technologiesには、今は会社としての収入はないわけですよね。

今のところないですね(笑)。

――この先、どうやって食べていくんでしょうか。

ブラウザのビジネスモデルは以前からあまり変わっていなくて、ユーザー数がある程度のレベルまでいけば、かつてOperaが始めた、検索窓などからパートナーサイトへの誘導によるレベニューシェア、アフィリエイト等を進めていくことで、収益化できると考えています。実は、そこはあまり心配していません。

――会社のサイズも小さくなったことで、ドカンとお金が入ってくるような事業を考えなければいけないということはなく、これまでマーケティングや戦略の担当として冨田さんが積み重ねてきた経験、ノウハウ、人脈を活かすことで十分やっていけると。

長年同じブラウザビジネスをやってきて良かったのは、そうやって蓄積されてきたものがあるということですね。マネタイゼーションの部分は、はっきり言ってほとんど心配してないです。

ビジネスモデルよりも、自分たちがちゃんとユーザーの期待に応えられるペースでどんどん新機能を追加し、製品の品質を上げていけるかがカギになると思います。今はすごく良い手応えを感じていて、次の1年くらいで、収益化に最低限必要なユーザー数は獲得できるのではないかと考えています。

――テクニカルプレビュー版に対する反応はどうですか。

Vivaldiでは基本的には製品の開発もマーケティングもパワーユーザーを念頭に置いていますが、ページのカラースキームによってUIの色が変わる機能は、けっこうライトなユーザーにも「おおっ」という感じで受けたようなんですね。まだプレビュー段階なので何とも言えませんが、パワーユーザー層を確実につかみながら成長していくという戦略にプラスして、もしかすると、比較的ライトなユーザー層にも使ってもらえる可能性があるのかもしれません。

――フラットデザインで“おしゃれかわいい”みたいなイメージがあるのかもしれませんね。

僕もちょっとびっくりしたんですけど、ファッション誌「Cosmopolitan」のロシア版が記事を書いてくれたりして。Cosmopolitanのサイトを開くと、UIがサイトと同じピンク色になるんですけど、それが編集者に気に入れられたのか……。

あと、サンフランシスコに編集部のあるライフスタイル誌「Brit + Co」の女性向け記事で、タブがスタックできるからショッピング中にたくさんタブを開くのに便利だと紹介されたり。僕らが想定していなかったユースケースで、こういう人たちにもVivaldiのデザインが受けるんだ、という意外な手応えも感じています。

設定で「アクティブタブの色を選択」をオンにしておくと(デフォルトでオン)、Webページで使われている色に応じてタブなどのUIカラーが変わる。右がCosmopolitanロシア版のサイト

――ちなみに、サイトによってUIの色が変わるこの機能のねらいはどこにあったんでしょうか。

最初はデザイナーの「ちょっとこんなふうに作ってみたんだけど」というようなアイデアだったんですけど、採用した理由としては、タブを切り替えたことがすぐわかるというだけでなく、Vivaldiを初めて使うユーザーに視覚的にも新しい体験を伝えられることが大きいです。

既存のブラウザからの乗り換えの敷居を下げるため、他のブラウザとなるべく同じように作るという考え方もあるとは思いますが、Chromiumベースのブラウザが世の中にたくさんある中で、Chromeのスキンみたいなものを作ることにあまり意味はない。僕らは初めてVivaldiに触ってもらったときに「これはワクワクする」「今までのと明らかに違う」という感じを出したかったんです。