プレミアムブランド専用修理とあんしん点検パックの違い

プレミアムブランド専用修理サービスでは、ユーザーからの要望を受けた修理のほかにも、カシオ規定の動作点検や内部部品の点検・交換・外装の洗浄などを行っている。では、定期的なメンテナンスを主眼とするあんしん点検パックは、それらとどう異なるのだろうか。実際の作業を担当する、カシオテクノ 東日本リペアセンター長 立川雅一氏にお話を伺った。

カシオテクノ コンシューマ事業推進部 コンシューマリペアセンター 東日本リペアセンター長 立川雅一氏

立川氏「まず、一般モデル修理とプレミアムブランド専用修理の違いから説明しましょう。時計修理のプロセスを大きく分けると、修理診断、修理、修理後検査という3つがあります。各プロセスの中で、より細分化された試験や作業が行われます。

例えば一般モデル修理では、修理前と修理後を問わず、通常であれば低温槽での低温検査や姿勢差テスターを使った常温検査は行いません。

しかし、プレミアムブランド専用修理では、内部修理はもちろん、電池交換でもこれらすべてを行います。したがって、プレミアムブランド専用修理では修理に2週間ほどのお時間をいただいております」

つまり、プレミアムブランド専用修理サービスでは、細部にわたって試験や点検を実施しているということだ。

プレミアムブランド専用修理の流れ(カシオ計算機のWebサイトから)

これがあんしん点検パックになると、さらに試験や点検項目が増える。もっとも、あんしん点検パックは、その名の通り点検(やケア)こそが主眼なのではあるが。

立川氏「機能部の確認では、6項目(プレミアムブランド専用修理)が9項目(あんしん点検パック)に、外装確認では2項目(プレミアムブランド専用修理)が7項目(あんしん点検パック)に増えます。

プレミアムブランド専用修理では汚れている場合のみ洗浄するケースや裏ぶたも、あんしん点検パックではすべて洗浄。ケースにはムーブメントが入っているので、超音波洗浄機が使えません。すべて手で洗います。

ボタンもすべて洗浄します。プレミアムブランド専用修理では劣化時のみ交換となるピンやバネ棒、Oリングも、あんしん点検パックではすべて交換します。アナログブロック(駆動部分)においては、歯車の動作正常性を波形にして検査する動作波形検査も行います。これはプレミアムブランド専用修理では行っていません」

バンド洗浄においては、プレミアムブランド専用修理では超音波洗浄機でバンド全体を洗浄する。対してあんしん点検パックでは、バンドピンを抜いてコマをバラバラにし、分解洗浄。時間と手間をかけて、細部まで洗浄しているのだ。

常温検査では、回転する器具で時計の姿勢を変化させながら、遅れや進みを24時間検査する。設定温度は25℃

高温槽と低温槽。高温槽は60℃、低温槽は0℃にセットされており、過酷な環境下でもきちんと動作するかを検査

電波時計の自然受信検査。窓際に置き、試験用の受信BOXの電波だけでなく標準電波を受信できるかどうかを検査する

ソーラーセルや二次電池の性能低下を検査する光充電検査

針精度試験機。正確な針位置精度を求めるOCEANUSユーザーの要求に応えるためのツールだ

自動針打ち機。経験の浅い技術者でもモニターを見ながら、正確な針打ちができる設備だ

時計の精度(日差)を計測し、調整するための歩度計

磁力の残留値を計測する測定器、テスラメーター。障害原因の特定に威力を発揮する

アナログブロックの歯車の動作正常性を波形にして検査する動作波形検査。これはあんしん点検パックでのみ実施

バンド洗浄に使用する超音波洗浄機

ウォータープルーフチェッカーで防水性能の低下がないかを確認したうえで、水没試験を行う

山形のPPLでも使われていた水没試験機。一定の圧力をかけて耐圧性能を確認する

これらの工程は、すべて工程管理票で管理される。点検と作業の結果や気付いた点は作業報告書に記入されるので、どの技術者が作業しても作業項目やチェックポイントが抜け落ちることもない。

あんしん点検パック作業報告書。点検が主目的のため、時計全体のチェック結果がくまなく書き込めるようになっている

■プレミアムブランド専用修理・あんしん点検パックの主な違い
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