「将棋電王戦FINAL」戦いの意義
最後に今回の戦いについて、プロ棋士側に立って考えてみたい。
過去の戦いに置いて、コンピュータ将棋が総合的に見てプロ棋士に匹敵する、あるいは凌駕する実力を有していることは証明されている。同時にプロがコンピュータにまったく歯が立たないわけでは、ないということも同様である。そして、この先プロがコンピュータにもっと勝つために必要なことは、遠山五段のインタビューにもあるように、コンピュータ将棋を徹底的に研究して、弱点や癖を見抜き、それに合わせた戦い方に徹することであろう。
しかし、本来人間同士の戦いに勝つことがプロの仕事であり本分なのだ。コンピュータとの戦いに勝ったところで、プロ棋士としての将来にはほとんど意味をなさない。現在のプロは将棋が非常に高度化されたことで、ただでさえ日夜研究に追われている。その貴重な時間を、対コンピュータ戦略を練るということに費やしているわけにはいかないのだ。
だから、コンピュータとの戦いは今度で最後になる。同時に最後だからこそ、今回だけはプロ棋士の本分を一時的に捨ててでも、対コンピュータ戦に特化した戦いを本気でやろうとしているのだろう。そのために厳選されたメンバーが、今回の若手と準若手揃いメンツなのだ。
コンピュータとの戦いに本気で臨む棋士の姿が見られるのは、今回が本当に最後になるかもしれない。メンバーと準備の深さを考え合わせれば、最初で最後と言ってもいい。今回プロ側の勝機がどれほどあるかと問われれば、50%に達しないと予想する。だが、勝敗予想とは別に、過去の戦いとは異なる何かが見られるものと期待している。