「ノートブックの再発明」ふたたび
Appleは2010年に「Back to the Mac」を掲げて、iOSの成功をMacに取り入れ始めた。その成果の1つが2010年10月に発表した「MacBook Air」だ。当時同社は「ノートブックを再発明」とアピールした。フラッシュストレージを活かしたインスタントオンと長いバッテリー待機時間、小型化による軽量構造はユニークで、たしかに先進的だった。やがてMacBook Airのスタイルはモバイルノートのトレンドへと変わった。
一昨年から昨年にかけてノートPCの売上が低迷している。Macは伸びを維持しているものの、「iPhoneやiPadによって、ポータビリティの定義がここ数年でずいぶんと変わった」とCook氏。そこでAppleは再びiPhoneやiPadから学び、あらためて「ノートブックの再発明」に挑んだ。その成果が新しい「MacBook」である。
新MacBookを一言で説明すると「持ち歩いて使えるMacBook」だ。重さはわずか920グラム、厚みは最厚部でも13.1ミリしかない。MacBook Airより24%も薄い。そして、iPhoneやiPadと同じように手軽に持ち出せるように、ポート類をUSB-Cポート1つとヘッドフォンポートに絞り込んだ。USB-CポートはUSB 3.1とDisplayPort 1.2ビデオ出力をサポートするが、主な役割は充電である。
データは主に無線でやり取りする。だから、802.11 acとBluetooth 4.0をサポートする。ロジックボードは11インチMacBook Airより67%も小さい。プロセッサに消費電力5ワットの第5世代Intel Core M (Broadwell)を採用してファンレス構造を実現した。そうしてできた空間をバッテリーで埋めることで、薄くて軽い本体で11インチのMacBook Airと同等のバッテリー動作を実現した。
MacBook Air同様に新MacBookも手前が薄いデザインだが、薄い部分もバッテリーで埋められるようにシート状のバッテリーを開発した(上)。従来のブロック状のバッテリー(下、薄い部分に空間ができている)よりも35%も多くのバッテリーを積み込める |
手軽に使えても、コンテンツを消費するためなら、ユーザーはMacBookよりも薄くて軽量なiPad Air 2を選ぶだろう。Macが選ばれる理由は生産性である。そこでキーボードとトラックパッドを強化した。フルサイズキーボードに、従来のシザー構造のキーに変えてバタフライ構造のキーを採用したことでタイピングの安定性がおよそ4倍向上した。トラックパッドは、4つの感圧センサーとタプティックエンジンを搭載した感圧タッチトラックパッドに変えた。従来のトラックパッドは上部にヒンジがある構造で、上の方を押してもクリックできなかったが、感圧タッチトラックパッドは全体で指の圧力を感知する。どこを押してもクリックできるし、また圧力の変化でも操作できる。