「10軸センサー」は歓迎

デザインや手にしたときの感触がiPhone 6の"外向きの変化"だとすれば、IC/センサー類の追加・機能向上は"内向きの変化"と言えるかもしれない。64bitデュアルコアのSoC「Apple A8」、イメージセンサにオートフォーカス用素子を組み込んだ「Focus Pixels」、最新/最速のWi-Fi仕様「802.11ac」対応……いずれも目視確認はできないが、操作性や使い勝手に大きく関わるニューフィーチャーだ。

個人的にインパクトが大きかったのは、A8のコプロセッサ「M8」。加速度センサーとコンパス、ジャイロスコープから継続的かつ消費電力を押さえてデータを収集することは従来のM7と大きく変わらないが、新たに搭載された気圧計もサポート。これで、階段の昇降やフロア間の移動も検出可能になり、新たに標準装備されたアプリ「ヘルスケア」で確認できるようになった。

iOS 8の新アプリ「ヘルスケア」は、気圧センサーの働きにより「上がった階数」をiPhone 6本体のみで測定する

筆者はジョギングを日課としているが、iPhone 6を肌身離さず持ち歩いているわけではなく、別に運動量を測定したいわけでもない。そもそも大柄なiPhone 6を持って走りたくないし、前述したとおり落としやすいので必ず自宅待機させている。ではなぜ「M8」に注目するかというと、それは「屋内測位への期待」だ。

現在、国土交通省を中心に進められている「高精度測位社会プロジェクト」では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に高精度な測位環境の環境づくりに力を入れている。その(エンドユーザ側の)主役となるのがスマートフォンであり、内蔵のセンサー類だ。

「10軸センサー」搭載のiPhone 6は、ビーコン(Bluetooth)とWi-Fiから位置情報を受け取れることもあり、屋内測位対応端末のリファレンスになる?(画面はJR東日本の「東京駅構内ナビ」)

なぜiPhone 6が関係するかというと、地下街や建物内での正確なナビゲーションを実現しようとすれば、Wi-FiやBluetooth(ビーコン)の活用にくわえ、「10軸センサー」(加速度センサー×3、ジャイロセンサー×3、電子コンパス×3、気圧センサー×1)の装備が要求されるからだ。まだ実証実験の段階ではあるが、iPhone 6はこの条件を満たしているうえ、デュアルドメインピクセル採用のRetinaディスプレイは屋外でも見やすい。iPhoneの国内シェアを考えても、屋内ナビのリファレンス端末の1つになることは確実だろう。