ストックフォトとは何か?

そもそも「ストックフォト」とはどんなものだろうか?。今井氏は、ポスターや広告、店内ディスプレイ、プロモーションビデオ等で実際にストックフォトを活用した作品をいくつか例として紹介したのち、「ストックフォトとは、頻繁に使用されるであろうシチュエーションで、あらかじめ用意された写真素材のこと」だと説明した。

ゲッティ イメージズなどのストックフォト会社が扱っているのは「カメラマンの権利(著作権)のみ」で、素材の「著作権使用ライセンス」を提供しているに過ぎないという。他方では、「被写体の権利」に関して、写真によっては許諾を取得済みの場合もあるが確認が必要となる。

ストックフォトが登場した25年前は主にポジフィルムで用意され、利用者は大量のカタログの中から必要なものを注文し、バイク便で配送されていたという。当時は利用する媒体毎にライセンスが発行されており、非常に複雑で管理が煩わしかったという。現在はデジタルデータ化されており、必要な時にネットで検索してダウンロードで入手できるため非常にスピーディになったとして、ライセンス形式も用途ごとではなく、ひとつのライセンスを取得すれば、ほとんどの媒体で使えるライセンスが主流になったということだ。

ストックフォト会社が扱うのは「カメラマンの権利(著作権)のみ」

ストックフォトの種類とふたつのライセンスタイプ

ストックフォトには、ニュース報道向けの「エディトリアル写真」、広告や販促等プロモーション向けの「クリエイティブ写真」という2種類の写真がある。今井氏はエディトリアル写真について、「何が行われているかを伝達するキャプションを付し、ニュースや報道目的としてこれを使うのであれば、"報道の自由"に則って、被写体の権利について許諾を得なくても使うことができる」と語った。ただし、それはあくまでも報道機関やニュースメディアという認識を持った上での使用であり、報道目的の使用ではないと判断されるリスクについては自己責任ということだ。

ストックフォトには「エディトリアル」と「クリエイティブ」の2種類

ライセンスには「ライツマネージ」と「ロイヤリティフリー」の2種類

また、ストックフォトの「ライセンスタイプ」には、利用する用途や媒体毎に必要となる「ライツマネージ(RM)」と、一度購入するだけで追加のライセンス料なしでほぼ無期限に利用できる「ロイヤリティフリー(RF)」という2種類が用意されると説明した。後者の「ロイヤリティフリー」は、その名称から「無料」あるいは「何にでも使える」と思われてしまうケースや「購入すれば権利ごとすべて自分のものになる」と誤解されるケースもあるということだが、実際には「一度購入すれば追加ライセンス料が不要」という意味を指すという。

ロイヤリティーフリーが選ばれる理由は主に3つ

ちなみに、ゲッティ イメージズでは現在ロイヤリティーフリーが非常に人気だという。今井氏はその理由として、広告媒体の多様化によって、ビジュアルの更新頻度を高める上で写真のボリュームが必要になってきたことと、コストにも考慮して一点あたりの単価を抑えなければならなくなったことにより、「低コスト・高ボリューム」に対応するロイヤリティフリーが重宝されるようになったと述べた。そして、ひとつのライセンスでさまざまな媒体をまかなえるなど「ライセンスの管理がラク」であることも大きなポイントだとした。さらに、自己責任となっている「被写体の権利」の部分について、万が一トラブルが発生して損害賠償請求された場合などに「免責補償」を付加しているサービスを行っているものもあると紹介し、「トラブル(損害賠償)に対する安心」についても注目すべきポイントだと語った。

「ロイヤリティフリー」にも制限やリスクはある!

「ロイヤリティフリー」で購入した写真は、どんな用途で利用してもいいのだろうか? また、リスクは完全に回避できるのだろうか? 今井氏は「ロイヤリティフリーにも制限がある」とし、「利用用途」や「表現方法」、「ライセンス先」、「利用者数」といった4項目に関する制限がゲッティ イメージズのロイヤリティフリーには設けられていることを説明した。

これらについて順に説明すると、最初の「利用用途」に関する制限については、ポルノや性産業などの用途に使用したり、あるいは購入した写真を再販するなどの禁止行為だ。これらは「ライセンス規約」に明記されているので、これを熟読するか、あるいは企業の法務担当者などに確認してもらうのがトラブルの回避策のひとつとなる。

ロイヤリティーフリーにも「利用用途」、「表現方法」、「ライセンス先」、「利用者数」に関する制限がある

2番めの「表現方法」に関する制限とは「誹謗中傷的な使い方」だ。そのような表現ととられる可能性がある場合はトリミングするなどして本人を特定できないように加工したり、「※人物はあくまでも単なるモデルです」といったキャプションを付記するとともにその他適切な措置をとったり、または表現方法を再検討するなど、被写体となっている人物の気持ちになって表現方法を考えることが重要だとした。ただし、ここで同社が挙げたのはあくまでも対処の例であり、「これらの処置をすれば訴訟されない」ということではないため、ケースに応じて対応する必要がある。

「利用用途」や「表現方法に関する制限の対処方法

3つめの「ライセンス先」に関する制限については少々ややこしい話となるが、ゲッティ イメージズにおいて「ライセンス先」というのは「画像を使って"制作できる権利"を与えられた会社または個人」とのこと。例えば、制作会社がライセンスを購入し、ライセンス先も自社にした場合、クライアントのために画像を使って作成した成果物を納品することは可能だが、購入した画像をそのままクライアントに譲渡することはできない。これは別のクライアントに対しても同様で、購入もライセンス先も自社であることから、購入した画像を使用して作成した成果物を複数のクライアントに納品することは可能だ。

一方、制作会社がライセンスを購入し、ライセンス先がそのクライアントとなっている場合、制作会社がクライアントから委託を受けて作成した成果物をクライアントに納品することは可能だが、クライアントが成果物の作成とは関係なく制作会社に購入した画像をそのまま譲渡することはできない。加えて、この場合は制作会社が購入した画像を別のクライアントへ納品する制作物に利用することはできない。さらに、グループ会社間であっても、ライセンス先としては別会社扱いとなるので注意が必要だ。最後に「利用者数」に関する制限についても、許可された利用者数以上での使用は禁止されているので、使用可能な利用者数を把握しておく必要があるということだ。

安心して「ロイヤリティーフリー」を利用時のチェックポイント

安心できる写真を利用する際のチェックポイント

最後に今井氏は、ストックフォトのロイヤリティフリーを安心して利用するための際の確認事項として「著作権はクリアになっているか」、「被写体の権利(リリース)はクリアになっているか」(免責補償サービスは付いているか、付いている場合は補償限度額も確認)、「利用用途は規約の範囲内かどうか」、「ライセンス先が選択できるかどうか」、「利用者数は把握しているか」、「コストは見合っているか」という6つのチェックポイントを挙げ、ゲッティ イメージズが運営する「GettyImages」および「iStock」のふたつのストックフォトサイトが扱う写真の80%以上が被写体の権利について許諾を取得済みであることや、免責サービスが付加していることなどを紹介し、このセミナーを締めくくった。

近年は企業がSNSでプロモーションを行うなど、企業活動において写真が必要となるケースや更新頻度が急激に増加している。「有料だから安心」ということではなく、ここまであった解説の内容や上述の確認事項などを参考に、確認した上で素材を活用してみてほしい。