事件の数だけドラマがある!? さまざまな犯人像

ミステリーというジャンルが見る者の心を魅了するのは、謎解きの面白さだけではない。作品の数だけ犯人像もさまざまで、彼らがなぜ罪を犯したのか———その背景にももうひとつのドラマがある。彼らを犯行に駆り立てた理由を探るミステリーの形式は、ホワイダニット(Why done it?)と呼ばれている。

例えば『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』でジョニー・デップが演じたのは、妻を死に追いやった悪徳判事への復讐心がゆがみ、判事だけではなく関係のない人たちまでも殺めてしまう悲しき殺人鬼。『危険な情事』は妻子ある男性との一夜の情事のすえ、ストーカーと化した女の戦慄の凶行が描かれる。

こうした私怨から事件を起こす犯人は、作品によっては同情を誘うものもあるかもしれない。それよりもおそろしいのは、無差別殺人や快楽殺人、サイコキラーなど“動機が不明”な犯人像で、我々は出口の見えない恐怖と闘うことになる。

『羊たちの沈黙』のレクター博士や人気教師のサイコパスな裏の顔を描いた『悪の教典』の蓮実などが好例。いずれも殺人に異様な興奮を覚え、自己陶酔に浸るキャラクターで、悪役ながら圧倒的な存在感を発揮する。

動機不明ながらこれらの犯人像とは一線を画し、映画史に残る悪役となったのが『ダークナイト』のジョーカー。残虐な凶行を繰り返す彼は、正義のヒーローであるバッドマンに対して真の正義と悪について問う。その姿はしだいにカリスマ性を帯び、見る者の価値観にも揺さぶりをかけていく。

連続ドラマW
『硝子の葦~garasu no ashi~』主演の相武紗季

連続ドラマW『硝子の葦~garasu no ashi~』もホワイダニットパターンのひとつ。

相武紗季演じる主人公、節子は母親から虐待されつづけた過去をもち、その後、母親の元愛人と結婚。現在は元雇用主と不倫をしているという複雑なヒロインだ。

やがて節子は殺人事件を起こした後、焼身自殺を図る……というあまりにも壮絶な人生を歩むのだが、彼女がなぜ犯罪に手を染めたのかが繊細な筆致で描かれていく。

相武が体当たりで臨んだ官能的なシーンにも注目だ。



いかがだっただろうか? 謎が謎を呼ぶ展開やアッと驚くエンディング、そしてカリスマ性あふれる犯人像など知的好奇心をくすぐられるミステリーの魅力を改めて確認してみていただきたい。

ちなみに今回紹介した第51回江戸川乱歩賞受賞作の『天使のナイフ』は、小出恵介の主演で2月22日(毎週日曜22時~ 全5話 第1話無料放送)からWOWOWプライムにてスタートとなる。特設サイトはこちらから。

また、連続ドラマW『硝子の葦~garasu no ashi~』は2月21日(毎週土曜22時~ 全4話 第1話無料放送)からWOWOWプライムにてスタート。特設サイトはコチラから見る事ができるので、事前チェックすることも忘れずに!