今回の取材は、完成披露舞台あいさつ後に行われた。その日の二階堂は昼のイベントに出席し、夕方からの舞台あいさつ前後には同作の取材。現在放送中のドラマ『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)も撮影中のため、相当多忙な日々を送っていると思われるが、「そこは大丈夫です」と語る。「忙しいことはいいことだと思いますし。特別自分が忙しいとは…」と本人にとっては大きな問題ではないようで、「作品に入ってバタバタしたりすることはありますけど、終わったらゆっくりする時間もあります」とリラックスした表情を見せる。
映画やドラマの撮影に追われていたことから現役での受験は断念。一浪してまで大学にこだわる芸能人は珍しいが、「入ってみないと分からない場所だったので、それで挑戦してみようかと」という思いによる決断だった。大学に進学してよかったことを聞いたところ、「今はまだ在学中なので、それを客観的に考えられるようになるのは、卒業してからだと思います。しばらく時が過ぎ去ってから」。「その時、その時で全力で取り組まないといけないことばかりなので、そういうふうに見つめ直す時間もあまりありません。それはどの作品に入る時にも言えることなんですが、目の前にあることをただ自分の出せる限りの力で取り組むしかないと思っています」と力強い言葉を残した。
2011年の第68回ヴェネツィア国際映画祭で、新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を染谷将太と共に受賞(『ヒミズ』)した二階堂。その後も、数々の映画賞でその名が上がり、昨年の功績が認められて第39回エランドール賞新人賞、そして、第38回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞(『私の男』)するなど、今では映画界に欠かせない存在となっている。このことについて「うれしいことなのでそれはありがたくいただいて、そういう時はこれからも頑張っていこうという気持ちになります」と素直に喜びながら、「でもそこを意識して作品を取り組んでいるということはありません」と付け加える。
「年々、楽しいことが増えていっています。2014年も楽しかったですけど、今年ももっと楽しい良い年にしたいなと思っています。去年は目の前にあることをひたすらやっていました。今年もそういう年になるんじゃないかなと思います」と仕事の向き合い方に変化はないようだが、その言葉からは充実ぶりがにじみ出ている。
『味園ユニバース』には、カスミが大切なものを指の本数で表すシーンがある。今の二階堂は、果たして何本の指を立てるのか。「私はカスミとは違って、数え切れないくらいいっぱいあるなと思います(笑)」と数を明かすことはなかったが、その中での一番大切なものを聞いたところ、真っ先にこう答えた。「今も、これまでも、そしてこれからもずっと。一番大切なのは支えてくれている人たちです」。
(C)2015「味園ユニバース」製作委員会
■プロフィール
二階堂ふみ
1994年9月21日生まれ。沖縄県出身。12歳の時「沖縄美少女図鑑」に掲載された写真がきっかけとなりスカウトされる。役所広司の初監督作品『ガマの油』(09)でスクリーンデビュー。2011年『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で映画初主演。そのほかの出演作に『ヒミズ』(11)、『指輪をはめたい』(11)、『悪の教典』(12)、『脳男』(13)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『四十九日のレシピ』(13)、『ほとりの朔子』(13)、『私の男』(14)、『渇き。』(14)、『日々ロック』(14)など。今年は『味園ユニバース』のほか、『ジヌよさらば~かむろば村へ~』(4月4日)、『この国の空』(夏)の公開を控えている。