子どもたちの努力とアイデアが光った作品群
10組のプレゼンテーションを終えた後に別室で審査が行われた。当初は20分程度の時間を予定していたが、議論が白熱したらしく再開は休憩を挟んだ45分後。のちに日本マイクロソフトの宗像氏は「どの作品も完成度が高くて、全部に『A』を付ける審査員が多かった」と説明した。ここからは各企業名を冠に持つ各賞の発表が始まる。
PowerPointの機能を活用している作品を選出する「日本マイクロソフト特別賞」を受賞したのは、6組目「伝統を受け継ぐ僕らの学校」。堀田顕大さんはPowerPointを使える様になるまで1週間ほどかかったが、緊張していたのか司会の「苦労したところは」という質問には照れて何も答えられなかった。総評として宗像氏は「学級新聞、テンプレート、新しい使い方を勉強してもらって、また来年チャレンジしてほしい。将来は約6割の職業がなくなると言われていますが、自分を表現するプレゼンテーションはこれから大事になります」と、プレゼンテーションが持つ重要性を説明した。
ユニークで個性的な作品を選出する「NEC賞」は、7組目「あの有名人が愛した能!」が受賞。寺田一瑳さんたちは、「学校の授業で学んだ結果を出せて嬉しかったけど、内容を考えるのが難しかった」と語った。宮田氏は選定理由として「自身が中学生の娘を持つ父親として見てしまい、どれも甲乙を付けられなかった。しかし、プレゼンテーションは映像やパフォーマンスを組み合わせて、人に内容や自身の思いを伝えるのが大事という観点から本作品を選びました」と述べ、「親に欲しいものをねだる時も『買ってもらったらボクはこうなるんだ』と筋道を説明する場面にも(プレゼンテーションは)役立つ」と子どもたちに語りかけた。
もっとも自分の学校・地元への情熱を感じた作品を選出した「東芝賞」は、9組目「ビバ! ぼくらの遊び場」。第1回に続いて連続受賞とのこと。渡邊春菜さんは緊張もすっかりほぐれたらしく、3人が並ぶと1つの画になるTシャツをアピールし、会場を賑やかに盛り上げた。選定理由として荻野氏は「公園でたまたま知り合った3人のチームワークや元気良さ、プレゼンテーションに大事な演出・演技が素晴らしかった」と説明し、公園という題材や、唯一の2校応募もポイントになったと語った。
チャレンジが感じられた作品を選出した「富士通賞」は、10組目「輝き続ける清泉小学校」が受賞。清泉小学校の雨宮真子さんたちは、「最初はPowerPointも難しく(壇上では)緊張したけど、学校の良さを3つに絞り込んで伝えられたのが良さかった」と努力が報われたことを素直に喜んでいた。川合氏は「(PowerPointの)アニメーションや効果音を上手に使って、楽しく見ることができました」と全体を評価しつつ、「チャレンジという意味では全作品を選出したかったが、見た人に残るという点では、彼女たちのかけ声が印象的でした」と選定理由を説明した。
そして審査員の総合点がもっとも高く優れた作品を選出する「朝日小学生新聞賞」は、4組目「神と紙のまち岡本」が受賞。加藤千尋さんらは「今まで頑張ってきたことが達成できた。自分の中では100点満点です」と語り、1カ月半ほど毎週土日に集まって練習した成果を振り返った。脇阪氏は「(グローバル化時代を背景に)世界へ通用するプレゼンテーション能力は重要です。大人の世界では長いプレゼンテーションは嫌われますが、制限時間を厳守できたことが素晴らしい」と選定理由を説明した。
末節として筆者の感想も述べておきたい。緊張しながらも自分たちで考えた内容を発表する子どもたちを見ているだけでほほ笑ましく、頼もしげだった。記者の後ろで見ていた父兄関係者は、誇らしい気分だっただろう。司会者が苦労した点について訪ねると、多くの子どもたちが「ない」と回答した点について宗像氏は、「テンプレートで簡単に作れたのでは」と述べつつも、「応募選定後にリファインする作品が多かった」と評した。筆者が確認したプレゼンテーションデータのファイル名からも、日時から付けた連番や"差替用"、"本番"といった文字が見て取れる。
冒頭で述べたように本イベントは今年で2回目となるが、宗像氏は「来年も続けられると嬉しい」と述べた。さらに「今度は日本マイクロソフトが独自のイベントを開催したい」と、ICT教育にコミットする姿勢を強く見せた。
阿久津良和(Cactus)