スマートフォンの開発に欠かせない要素であるSoCだが、世の中には大小含め、多彩なSoCメーカーがある。こうしたモバイル向けSoCのうち、主要なメーカーの傾向やトレンドを俯瞰してみよう。
通信系に強くハイエンドで高いシェアを持つクアルコム
クアルコムはもともと移動体通信向けのチップを製造するメーカーであり、無線LAN大手の米アセロス・コミュニケーションを買収したことで、モデムから無線LANまでカバーする技術を持っている。同社のSoC「Snapdragon」シリーズもまた、無線関連の技術がいち早く統合されるシリーズだ。
ハイエンド市場向けの「Snapdragon 800」シリーズは、2014年の国内向けスマートフォンの大半に搭載されていたこともあり、多くのスマートフォンユーザーにとっておなじみのSoCだ。今年も引き続き同シリーズが国内向けスマートフォンに多く搭載されるだろう。従って、日本のユーザーにとってはクアルコムのハイエンドSoCのトレンドこそがスマートフォン技術のトレンドと言い換えてもいい。
同社のSoCはCPUに独自設計の「Krait」コアを、GPUにAMDから買収した「Adreno」を採用しており、消費電力と性能のバランスが高いレベルでまとまっている優等生的チップだ。出荷が始まったばかりの最新版「Snapdragon 810」はCortex-A57/A53ベースのコアを4つずつ搭載したオクタ(8)コア製品だが、これはARMの低消費電力技術「big.LITTLE」に対応するもので、処理の負荷に合わせて高性能なA57コアと消費電力の低いA53コアを切り替えるタイプであり、4コアと比べて単純に2倍速くなるわけではない。
8コア構成に加え、LTEのカテゴリー9(最大450Mbpsのキャリアアグリゲーション)、無線LAN技術では60GHz帯を使った「Wi-Gig」に対応しており、特に後者は対応ルーターが登場する今年後半頃の無線LAN技術のトレンドとなりそうだ。もっとも、無線技術は単独製品としても販売されており、他者もクアルコム製モデムを採用する事例が多いため、今年後半のハイエンド製品(iPhoneを含む)全体のトレンドになる可能性は高い。
もう一つ、Snapdragon 810は、メモリアーキテクチャとして最新の「LPDDR4」に対応している。LPDDR4は現行のLPDDR3と比べて消費電力が低く、データ転送速度が約2倍に高速化されている規格。コア数の増加や画面解像度の向上に加え、4k動画など高スループットになりつつあるスマートフォン/タブレットにとっては重要な規格だ。メモリチップの量産も始まっており、今年のハイエンドスマートフォンのメモリは順次LPDDR4に置き換わっていくことになるだろう。