時計を動かす最初の駆動部、誤差が許されない"ローター"

アナログブロックの製造工程でもっとも繊細かつ重要なのは、ローターの搭載だ。ローターとは、水晶(クォーツ)の振動を動力に変換するための磁石付きの歯車。最初の駆動部となるため、針位置のズレを自動補正する仕様については特に、取り付けの誤差が絶対に許されない。しかも、このローターの歯車は、直径わずか1.1mm。肉眼で確認するのも厳しいほどの極小パーツなのだ。このローターは、磁石となる金属リングを組みあわせた状態で金型から射出成形される「インサート成形」で、このパーツも山形カシオが自社製造している。

真ん中の小さな歯車がローター。その周囲の黒いリングは磁性体で、この直径がおよそ1.1mm!

ただでさえ小さな歯車と比べても、格段に小さい

金属リングと樹脂パーツを組みあわせたローターをインサート成形により製造するロボット

金型に金属リングを自動的にセット。一歩間違うと金型にダメージを与えてしまうため、高精度な制御が要求される

金型内にプラスチックを射出

金型を外して、射出したローターを取り出す。一度に6個のローターを射出成形できる

針位置のズレを自動補正するOCEANUSでは、秒針を駆動させる歯車(4番車)の搭載にも繊細さが要求される。この4番車を正確な位置にセットするため、歯車には0.4mmの微少な穴が空けられており、組み立てロボットのセンサーがこれを検出。より正確な位置に歯車をセットする。

これらパーツの保持にはバキュームセンサーが使用され、パーツを最適な強さと角度でピックアップし、正しい位置でリリース。また、センサーと連動する画像処理技術が使用されており、実際の状態の映像をパーツが正しくセットされた状態と比較し、精度を担保している。このように、生産ラインでは高度なデジタル技術やセンシング技術を使用する一方、同時に歯車の噛み合わせや検知穴の開口量を人の目で顕微鏡を覗いて確認、手作業で調整しているのだ。

バキュームセンサーは、パーツの破損を防ぐためソフトに置かざるを得ない。パーツをセットした後、ピストンで素早く微細な振動を与えて歯車の噛み合わせを効率良く補助するなど(思わず「なるほど!」と感心!!)もしてはいるが、確実にしっかりと噛み合わせるには、人間の目と手が不可欠という。絶対的な精度を追い求めるOCEANUSクオリティの最後の砦は、やはり「人間の感覚」なのだ。

肉眼ではもはや視認が難しいほど小さい接点パーツを19カ所に自動配置

機械が配置した接点パーツに場所の間違いや漏れがないかを画像処理で確認

19カ所の接点パーツは、それぞれ大きさや太さが異なるので、このようなハイテク設備が不可欠だ

パーツフィーダーに入っているのはビス。登っていくに従ってビスが整列されて行く

マイクロモーターをビス留めする機械

撮像画像を利用して、微細なパーツの取り付け精度を解析

注射針を使ってパーツに塗っているのはオイル。その粘性を利用して極小のパーツを固定する

機械が歯車を置くと、グリーンのトレイをピストンが素早く叩く。微細な振動を与えて歯車の噛み合わせを補助するのだ

基準画像と計測画像を比較参照して、取り付け状況を精査

歯車の噛み合わせを人の目で確認しながら、検査・調整

熟練工の方々が顕微鏡で見ている映像はこんな感じ。実際には、歯車の重なりがぐっと立体的に見える

パーツを正確な位置に合わせるには熟練工の経験と感覚が要求される

モーターや歯車を搭載したメインプレートに赤い光を照射

ここまでのパーツがすべて正しい位置にセットされているかどうかを画像で判定する

組み上がったアナログブロックは自動でピックアップされ、出荷用のトレイにセットされる

空になった樹脂トレイ。この先で新しいメインプレートが積まれ、再び周回へ

次回はいよいよ、製品の組み立て工程となる「PPL」(Premium Production Line)に迫っていく。