狙いはキャリアアグリゲーションか
現在、携帯キャリアは通信速度を向上させる技術としてキャリアアグリゲーション(CA)を導入している。これは、2つの周波数帯域を1つに束ねて通信速度を高速化させる技術だが、この2つの周波数帯域を利用する際に、「グループの子会社間でまたがってCAを行うことができるかどうか」というのが問題になっている。
ソフトバンクモバイル単体では90MHz幅のため、CAを行う場合はイー・アクセスの周波数が使えると有利になる。子会社間でのCAが問題視された場合の対策としては合併が有利に働くだろう。新ソフトバンクモバイルでは、WCPを除く4社が合併するため、保有する携帯向けの周波数帯域は171.2MHz幅。PHS向けの周波数帯を携帯に転用しなかったとしても140MHz幅があるので余裕が出る。
子会社間のCAが認められた場合、さらにWCPの周波数帯を使えば170MHz幅となり、最多の周波数を利用できるようになり、どちらに転んでも問題はないだろう。契約数の割に所有周波数が多いという議論もあるかもしれないし、ソフトバンク側は周波数移行で使えない期間があったことなどを反論するかもしれないが、現時点で総務省の判断は読めないところだ。ソフトバンクがイー・アクセスの株式を取得した際には、総務省がソフトバンクに報告を求めているため、今回も同様の措置はあるだろう。
名実ともに契約数で第2位の事業者になり、豊富な資源も確保できる。端末調達の効率化も可能になるだろう。サービスは継続すると言うが、不調な事業の統廃合は十分考えられ、NTTの光卸サービスへの対抗もありえる。会社が分かれているよりも1社の方がスピード感も高められるという判断もありそうだ。
ソフトバンクモバイルの社長に宮内謙氏
孫正義社長は会長に、宮内謙副社長は社長に昇格する人事もあわせて発表されている。ソフトバンク側ではこれまでと変化はないと話すが、国内モバイル事業は宮内社長が担い、孫会長は海外を含めたソフトバンクグループ全体を統括する立場を明確にする、ということかもしれない。
今回のソフトバンクの合併は、ヤフーによるイー・アクセス買収が中止になり、ワイモバイルとして再出発してわずか半年経たずの合併で、ワイモバイルはブランドを残して消滅することになる。
今後、従来の事業の継続と新事業の創出がどのように進められるか注目したい。