将来への漠然とした不安を抱えていた20代。その後の30代で待っていたのは、それまででは想像もできないような"安らぎ"に近い状態だった。「自分の性格も分かってきてますし、自分の落ち着く心の拠り所、考え方もわかってきています。ただ、今はシンプルにお芝居ができればいいかなって思っています。自我も減りますし、いろんな意味で欲も減りました」「自分で自分に期待せず、しっかりコツコツと毎日を積み重ねていれば、自然といい道へと進んでいけるはず。そんな感じで今はやっています」と一歩一歩、歩幅を確かめながら女優としての道を歩んでいる。
「そういう気持ちになれたのは、30歳に入ってから。そして、今回のお話をいただけた事は驚きましたが、本当にうれしいです。世の中、出会いなんですね」と縁に感謝する田中。40代、50代に向けて、彼女が"女優の軸足"として掲げたのが「舞台」だった。「たくさん経験したいですね。やっぱり、お芝居の状態を磨きたいので。あとは舞台をやるたびに怖がりの自分が少しずつクリアできているというか。そういう精神的にもすごく強くさせてくれるので、自分としては舞台の板を定期的に踏んでいたいという思いがあります」と田中にとっての「舞台」は芝居の中心を担っている。
田中はこれまで5作の舞台に立った。「稽古を積み重ねて、不安や恐怖がやればやるほど消えていく。回復というか、稽古、公演を含めてこれだけやったという経験が安心につながる」と自らを分析し、その経験は「お稽古をして体に染み込んだその状態があれば、本番は解放的になれて、真剣に遊ぼうと思え、芝居で生まれた空気のにおいや響きなども含めて楽しむことができるんです」と大きな支えに。ドラマや映画などでも現場入り前には神経質になることが多いが、舞台で恐怖心と向き合った経験は、演じる場所が変わろうとも無駄になることはなかった。「舞台をやっていて本当によかった、助かったなと思う瞬間が、ドラマや映画の現場で何度もあります。台本を読んでお客さんの声が聞こえたりとか、お客さんの顔が想像できるようになったのも、やっぱり舞台の脚本を読むようになってから。私にとってはすごく大事なことだと思います」とうれしそうに話す。
最後に今年の抱負を聞いたところ、今の彼女らしい言葉が返ってきた。「2015年は本当に関わっているドラマのことしか考えられていません。自分のこれからの人生を考えられるのは……今のところそこまでです(笑)。それが終わってから、また見えてくることがあると思うので……コツコツやっていきます」
■プロフィール
田中麗奈
1980年5月22日生まれ。福岡県久留米市出身。身長158cm。A型。1998年の『がんばっていきまっしょい』で銀幕主演デビュー。その後も『はつ恋』(00年)、『東京マリーゴールド』(01年)、『ドラッグストア・ガール』(04年)、『暗いところで待ち合わせ』(06年)、『夕凪の街 桜の国』(07年)、『犬と私の10の約束』(08年)、『山桜』(08年)などの映画で主演。ドラマでは『猟奇的な彼女』(TBS系 08年)をはじめ、『平清盛』(NHK 12年)、『顔』(フジテレビ系 13年)など。今年1月からは『美しき罠~残花繚乱~』(TBS系)、『徒歩7分』(NHK)の2本の連続ドラマに出演している。
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