2015年の注目のスマホ関連サービスは過去を探ることで見えてくる。では、どんなニュースに注目したらいいのか。本連載では、マイナビニュースで執筆するライターに、期待が持てる2014年のスマートフォン関連ニュースについて取り上げもらう。第5回はYoichi Yamashita氏のレポートをお届けする。

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2015年のスマートフォンを占う昨年のニュース、私が選んだのはCBS Newsが特集した「What happens when swipe your card?」です。んっ、タイトルが悪すぎて分かりにくいですね。勝手に変えてしまいましょう。前の方の一文をそのまま使って「2014 is becoming known as the "year of the data breach." (2014年は『データ漏洩の年』として記憶される)」です。「それ、スマートフォンの未来と関係ないから」というお叱りの声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。米国でクレジットカード情報が漏れれば漏れるほど、そして個人情報が悪用されて私たち消費者の被害が膨れあがるほど、2015年にAppleのモバイル決済サービス「Apple Pay」が飛躍する可能性が高まるのです。

2013年末に大手ディスカウントストアTARGETから4000万件のクレジットカード情報が漏洩した時には大騒ぎになりました。でも、それから大規模なクレジットカード情報漏洩が頻発。Home Depotなんて5600万件でTARGETを大きく上回る被害件数でしたが、その頃にはニュースに触れる側も「またか……」という感じで怒りを通り越して、あきらめムードでした。

CBS Newsの特集をざっくりまとめると、今の米国のクレジットカードシステムで企業にデータ漏洩を防げというのは無理。「カード自体が基本的に不正に弱いのです。わらの家をセキュアにしようとしていることに問題があります」という結論です。

そりゃ、そうです。設備投資がかかるという理由でEMVチップ内蔵カードに対応するPOSシステムの導入がさっぱり進まず、EMV対応カードの活用が伸びないという悪循環。しかも、米国はクレジットカードなしで生活するのが難しいくらいのクレジットカード社会です。狙われて当然。買い物が増えるホリデーシーズンに、消費者の最新データがまとめて盗まれて当然なのです。

このニュース、「カード詐欺対策として効果のあるApple PayやGoogle Walletの普及に期待できる」というようにも読めますが、実際はApple PayやGoogle Walletの失敗を暗示するようなニュースです。だって、カード詐欺被害大国なんて言われても消費者の安全を度外視して、セキュリティに難ありな古いカードで支払わせて平気なのが米国の小売業者たちなのです。当然NFC対応POS端末の普及もさっぱり。彼らが自ら「より良い社会を……」なんて気持ちでNFC対応端末を導入してくれると期待できるなら、登場からすでに3年が経過しているGoogle Walletがもっと普及しているはずです。