昨年4月の日本武道館公演を最後に、アイドルグループ・私立恵比寿中学(以下エビ中)のメンバーとしての活動を終えた鈴木裕乃。同年11月23日には、初のオフィシャルカレンダーの発売を記念してイベントが行われ、1,500人のファンが殺到するなど変わらぬ人気をうかがわせた。自ら「険しい道」と語る女優業。エビ中としての活動を終え、女優として一歩を踏み出した今。彼女は何を思い、何を原動力に前へ進んでいるのか? 「女優・鈴木裕乃」の「過去」と「これから」を探った。
2009年にスカウトされたことがきかっけで芸能界入り。「最初は軽い気持ちでした」と流れに身を任せて足を踏み入れた世界だったが、所属事務所の先輩である北川景子の存在に影響を受け、次第に「女優」への憧れを抱きはじめる。ドラマや映画などの仕事に挑む中、レッスンの一環として、2009年に結成されたチアグループに加入。翌年にはエビ中に移籍し、「アイドル」の道を歩みはじめた。
「小学校6年生ごろから女優になりたいと思い始めて。少しだけ演技のお仕事をやらせていただいたんですが、エビ中に入ることになりました。最初は複雑な気持ちで、2012年5月にメジャーデビューすることになっても『女優』という思いが心の中にありました。でも……エビ中の方にかけてみよう。そう思って、精一杯がんばりました」
アイドルとしてのやりがいを感じる中、ある作品との出会いが彼女の運命を変える。初めての映画にも関わらず、主演という大役を任された『ジョーカーゲーム』(2013年8月公開)だった。この映画には同じくエビ中の松野莉奈をはじめ、bump.yの宮武美桜(現在は卒業)、夢みるアドレセンスの京佳といったアイドルのほか、吉田まどか、愛名ミラ、高月彩良といった役者たちが出演。共演者たちの演技は刺激となり、眠っていた彼女の欲求を呼び覚ますことになる。
「『ジョーカーゲーム』はとても楽しい現場だったんですけど、ものすごく課題が見つかった作品でもありました。撮影に入る1週間前からレッスンをしていただきました。その時に助監督さんが厳しく指導してくださって。うまく演じられるようにと頑張ったんですけど……やっぱり出来上がりを見ると自分の演技がダメダメなのは明らかでした」
事務所と相談をはじめ、12月末に"転校"を発表。ブログには「女優のお仕事と学業の両立という新しい夢に向かって頑張っていきたいと思います」と思いをつづっていたが、「家族に話しましたし、友だちにも。辞める方、続ける方と気持ちでやっぱり迷いがあって。相談した人に背中を押してもらいました」と悩みながらの決断だった。もっと演技がうまくなりたい。その一心が、彼女を突き動かした。