通信インフラとの融和

前項で取りあげた「融」は、スマートフォンと他の機器という関係から捉えたものだが、スマートフォンとエンドユーザという関係からも「融」(この場合は「なめらかにする」という意味合い)を見ることができる。多くのエンドユーザがスマートフォンをもの珍しさでイジり回す段階を卒業し、より高度に使いこなす段階へと移行しつつあるとすれば、2014年という年に起こった出来事のうち何が重要だったかが見えてくるはずだ。

その筆頭に挙げられるのは「SIMフリー」への動きだろう。これまでも一部携帯電話会社はSIMフリーに積極的な方針を打ち出し、ユーザからの求めに応じてSIMロック解除を受け付けてきたが、総務省は12月にSIMロック解除に関する新ガイドラインを発表(以下、改正ガイドライン)。実施は来年5月以降となるものの、SIMロック解除が義務付けられることになった。

SIMロック解除とSIMフリーは似て非なる制度だが、SIMロック解除が当然のこととなれば、最初からSIMフリーの状態で販売される端末が増えるのは時間の問題となる。特にエントリークラスの端末は、価格の低さから携帯電話会社による購入支援を期待するまでもなく、量販店や通販サイトでの販売が増えていくはず。MVNOサービス会社も増えて利用しやすくなり、スマートフォンの裾野はさらに広がることだろう。

そうなれば、いよいよスマートフォンが「インフラ」に近づくこととなる。かつて固定電話は高い世帯普及率を誇り、テレビ同様に家庭と社会をつなぐ役割を担ってきたが、高機能で場所を選ばず利用できるスマートフォンのほうがより多くの可能性がある。携帯電話会社はフィーチャーフォン時代に築いたビジネスモデルを見直さざるをえないが、「インフラ」であることを生かせばまた別の道があるはず。そのひとつが「スマートハウス」であり、2014年はスマートフォンのインフラ化が本格化した年として記憶されるかもしれない。

SIMロック解除が義務化され、スマートフォンの裾野はさらに広がりそうだ