kz氏「ジャンル毎のサイドキーがほしい」
続いて、音楽を担当したkz氏。予想以上に音楽制作とペンタブレットとの相性が良かった点をアピールした。音楽制作ソフトはショートカットキーを多く使うこともあり、「Cintiq」が備える「ラジアルメニュー」(ショートカットのようなもの)を使いこなしている様子がスクリーンに映し出された。
さらに同氏は、ペンタブレットの左側に備わる4つのファンクションキーやリングキーも駆使し、特に使用頻度の高い操作(コピー&ペーストなど)にはこれらのボタンに割り当て、少し頻度が下がる操作(新規トラック作成など)に対してはラジアルメニューを割り当てるなど、同タブレットが用意するふたつのファンクション機能を柔軟に使いこなしていたという。
さらに、ピアノロール画面では、マウス入力よりも指が疲れない上により直感的に入力できることについて、「楽譜を書いている感覚に近い」と語った。また、音楽制作用としては物理的なキーが足りない点を指摘し、「音楽用やフォトレタッチ用といった各ジャンルごとの分離型サイドキーがあれば面白い」と要望を述べ、タブレットの使用感として「音楽制作は単純作業が多く、13.3インチの液晶ペンタブレットを膝の上に載せ、ラクな姿勢で作業できたことが何よりも良かった」と語った。
YKBX氏「Cintiq Companion上で「Maya」が動くことに驚き」
ここで、会場に来られなかったYKBX氏がSkype中継で登場。「Cintiq Companion」で下絵を描いているシーンをスクリーンで映し出しながら、同氏が普段からマウスは一切使わず、イラストレーションのみならずあらゆる操作をタブレットで行っていることを紹介した。
今回の作品では、3Dモデリングを「Maya」で行い、「Adobe After Effects」の「パペットツール」で顔の表情や呼吸なども再現したということだ。これらのソフトウェアは「Cintiq Companion」(Windows 8が動作するモデル)上で稼働させており、同氏は液晶タブレットでMayaを動かしたり、After Effectsでアニメーションやエフェクトを付けることに関し「スペック的に大丈夫だろうか」と心配しながらも、実際に動作させて「問題なく動作したことに驚いた」という。
水尻氏「ペンタブのサイズや角度はとても重要」
続いて登場したのが、アニメーションを担当した水尻氏。今回は「Cintiq 22HD touch」を使って、「Adobe Photoshop」の通常のレイヤーに時間軸の付いた「ビデオレイヤー」機能でアニメーションを1枚ずつ手描きして制作したという。前後の絵を透かして表示するオニオンスキンモードが搭載されていたり、そのままレンダリングして動画ファイルに書きだせるなど、意外なことにPhotoshopはアニメーション制作向けの機能も充実しているという。同氏はこのPhotoshopを使う方法か、実際の紙に描くかのどちらかで、ほかのアニメーション作家の手法をまったく知らないとコメントしていた。
ちなみに、今回制作した動画は12fps(1秒あたり12フレーム)で、1枚あたりの作業時間は10分~20分とのことだ。つまり、1秒のアニメーションを作るのに2時間~4時間掛かる計算となる。ペンタブレットの使用感については「アニメーション制作は黙々と行う作業なので、サイズや角度はとても重要。今回使った液晶ペンタブレットはそれがすごく良かった」と述べた。
三輪氏「操作感がアナログに近い」
そして最後にイラストを担当した三輪氏が登場。漫画やイラストで活躍する同氏だが、液晶ペンタブレットを使って描いたのは今回が初めてだという。普段アナログで描くクセが強く、絵が右手で隠れないように左上から描いているとのこと。一時期、板タブ(液晶画面を備えない板型のペンタブレット)で描いている頃は手で隠れることがないためその制約から解放されていたが、今回液晶タブレットで描くに当たって「再びその制約が舞い戻った」としながらも、タブレット画面の上に直接定規当てて線をラクに引けるなど「感覚がアナログに近い」と語った。
作品中に登場し、最初に描きはじめたという黒髪の女の子は、液晶ペンタブレットの操作に慣れない点などもあって試行錯誤して時間がかかったという。しかし、次に描いた白い服の女の子はタブレットの操作にも慣れ、短時間で描き終えることができたという。最後に同氏は目の前にある「Cintiq 24HD touch」を使ってスラスラと女の子のイラストを描き上げながら、トークショーのエンディングを迎えた。
なお、同作品についての詳細や各クリエイターのインタビューなどは、ワコムの「Cintiq Creators Mash-Up」のWebサイトに掲載されている。