日本ではラーメンの具を代表するチャーシューだが、香港では広東料理の代表的なメニューのひとつでもある。先の「一樂燒鵝」とガラリと変わり、高級レストランならではの上質な肉を吟味し、丁寧に焼き上げたゴージャスなチャーシューもある。

40周年を記念した高級豚コンビ

2013年から連続してミシュランに掲載されている「翠亨邨」は、2014年に創業40年を迎えた広東料理店。素材重視のチャーシューは、人気メニューのひとつとなっている。そんな同店は40周年を記念し、2種を盛り合わせた「皇牌又焼鴛鴦●」(●は手偏に并、158香港ドル=約2,400円)という高級感ある一品を開発した。

記念メニューを作るにあたってスタッフ同士で意見を出し合う機会を設けたのだが、新メニューのアイデアに取り入れられたのが、なんと鹿児島の黒豚。香港では昨今、日本の地域食がブームと言われており、鹿児島の黒豚はグルメ好きの間でプチブームになっているという。これにもともと人気の四川省の豚肉を合わせた、日中合作の豪華メニューに仕上げた。

(上から)「皇牌又焼鴛鴦●」(●は手偏に并、158香港ドル=約2,400円)の脂身がトロける鹿児島の黒豚と伝統の味・四川豚。それぞれ単品もあり(鹿児島黒豚228香港ドル=約3,470円、四川豚138香港ドル=約2,100円)

とろける脂、香ばしい肉、蜜の甘味の三つ巴

高級肉をさらにおいしくする秘訣は焼き方にある。1本ずつ切った肉を1~2時間洗い流してやわらかくなったら、中国の味噌「磨鼓醤(モウチージャン)」に塩、醤油を入れたタレに3時間漬け込んだ後に焼く。まずは200度で20分、次に150度で20分、水あめを塗って100度で10分。肉によって焼き方は若干変わるが、このじっくり時間をかけて焼くのが肉をさらにやわらかくする秘訣だそうだ。

鹿児島の黒豚チャーシューは豚バラを使っているのだが、牛の脂かと疑うほど脂身がやわらかく、口に入れた途端のトロけ具合とやわらかすぎない赤身の食感が絶妙。しっかりとした肉の香ばしさとまわりのあめ焼きの甘みとが調和し、「この味を日本に持って帰りたい!」と思ってしまった。

285席もある広い「翠亨邨」の店内からは九龍公園が見渡せる。なお、香港内に3店舗展開している

対して四川省の豚肉は、肩肉のため脂が少なめで歯ごたえがしっかりありながらも、全体的にやわらかい。こちらが伝統的なチャーシューで、豚肉本来のさっぱりした味わいだ。味付けは同じでも、肉が違うだけで全くの別ものになる。ぜいたく2種のメニューのほかにも、40周年記念のチャーシューはほかにもあるので、チャーシューの食べ比べをしてみてもいいだろう。

40周年を記念したチャーシュー特別メニューは全部で6種類

2014年のミシュラン以外にも受賞は多数

翠亨邨 Tsui Hang Village(OpenRice掲載ページ)

※1香港ドル=15.2円で換算。記事中の価格・情報は2014年10月取材時のもの