独特のストレージ配置や液冷CPUクーラーが実現する高冷却

続いて「MASTERPIECE i1460PA2-DOC-CL」の内部を見ていこう。その大きなサイズ通り内部空間は広く、GeForce GTX 980が余裕を持って収まる。そのスペースを活かして、電源から伸びるケーブルは電源のすぐ後ろに束ねられている。またHDDはフロントからグラフィックスカードへのエアフローから切り離されたボトムに配置。オーバークロックされるCPUとGPUに、外部からの新鮮な空気が直接行き渡るように設計されている。

天板および左サイドパネルを開けたところ。高さのある外観通り、内部のスペースは非常に余裕がある

右サイドパネルを開けたところ。CPUソケットの裏側は、CPUクーラーを着脱しやすいよう大きくくり抜かれている

採用されているマザーボードは、BTO PCメーカーへのOEM向け製品と思われるMSIのZ97-S01を、さらにカスタマイズしたモデル。CPU-Zでは「Z97-S01_OC」と表示される。拡張スロットはPCI-Express x16を2基、x1が4基と、PCIを切り捨てて最新のスロットに注力した構成だ。CPUにはクーラーマスター製の液冷クーラー「Seidon 120XL」が取り付けられており、2つの12cmファンでラジエーターを冷やしている。元々温度が高めなCore i7-4790Kをさらにオーバークロックしているだけに、高性能なクーラーでなければ冷却が追い付かないのだろう。

グラフィックスカードやメモリを取り外したマザーボードの様子。MSI製のZ97-S01をさらにカスタマイズした製品が採用されている

CPUにはクーラーマスター製の液冷クーラー「Seidon 120XL」が設置されており、12cmファン2基を使って冷却している

フロントパネルを開けると、下部には2基の12cmファン用のスペースが確認できる。取り外し可能な防塵フィルタ―も備えているが、こちらにはファンは取り付けられていない。代わりに内部のグラフィックカードの横にEVERCOOL製の12cmファンが取り付けられている。なお、このファンは位置を前後させることも可能。HDDは脱着式のワンタッチHDDホルダに取り付けられ、最下段のHDDケージに設置されている。なお、フロントパネルのオーバークロックスイッチから伸びているケーブルは、マザーボード右上のコネクタに接続されている。Windowsの専用ツール画面にも表示されている通り、このスイッチはMSIのオーバークロック機能「OC Genie4」を利用したものなのだろう。

フロントパネルの内部には防塵フィルタ―を備えているが、この箇所にはファンは搭載されていない

ケース内部のHDDケージ周辺。12cmファンからの風が直接グラフィックスカードに吹き付ける構成となっている

オーバークロックスイッチから伸びるケーブルは、マザーボード右上の専用コネクタに接続されている

2014年最強グラフィックスカードと2400MHzのオーバークロックメモリ

グラフィックスカード「GeForce GTX 980」には、MSI製を採用している。オリジナルの外排気型クーラーを搭載しており、GPUの熱を必要以上にケース内にまき散らすことなく、ほとんどを外部に直接排気可能だ。ハイエンドグラフィックスカードながらも放熱量の指針であるTDPは165Wとなっており、補助電源コネクタも6pin×2と非常に扱いやすい。HDDは2TBのSeagate製品。ほかのパーツが優秀なだけに、ここで体感速度を落としてしまっているのがちょっともったいない。可能であればSSDの導入を検討しよう。電源はAcBel製の700Wを採用している。電源効率を表すプログラムである80PLUS BRONZEの認証も取得しているため、消費電力軽減効果もありそうだ。メモリは青いヒートスプレッダが取り付けられたADATA製の「AX3U2400W8G11-BD」。こちらはXMPに対応したオーバークロックメモリとなっており、2400MHzという高いクロックで動作している。このメモリもまた本機の動作速度向上を支えるパーツの一つだ。

MSI製のGeForce GTX 980。外排気型のオリジナルクーラーを採用しており、ケース内部へ必要以上の熱をまき散らさない

HDDはSeagate製のBarracuda。容量は2TBとなる。ほかのパーツが高速なだけに、本機のボトルネックとなるかもしれない

定格出力700WのAcBel製電源「iPower85 700W」。80PLUS BRONZE認証も取得しているため、省電力効果も高い

2400MHzで動作するADATA製のオーバークロックメモリ。標準クロックである1600MHzから大幅なアクセス速度の向上が見込める

ベンチマークでオーバークロックの効果を確認!

それでは、各種ベンチマークテストでオーバークロックによる効果を検証していこう。まずはWindowsシステム評価ツール「WinSAT」を利用して、Windowsエクスペリエンス インデックス スコアを確認。GeForce GTX 980によるグラフィックス2項目のスコアに驚くが、オーバークロックスイッチをONにすることでCPUがそのスコアに近づいてきた。プロセッサとメモリの数値が0.2上昇し、まずは期待通りの結果だ。なおプライマリディスクはHDDであることがハッキリとわかる5.9。やはり本機のネックはこのストレージだろう。続く「PCMark8」の結果では各種数値のほか、Casual Gamingのスコア上昇も確認できた。グラフィックスカードのオーバークロックもしっかりと結果に反映されている。さらに「CINEBENCH R15」も試してみよう。CINEBENCHではCPUマルチ/シングルの結果はもちろんのこと、OpenGLのスコアもかなりアップした。処理能力がリアルに反映されるテストだけに、この結果はうれしい。

Windowsエクスペリエンス インデックス スコア
項目 定格 オーバークロック
プロセッサ 8.4 8.6
メモリ 8.4 8.6
グラフィックス 8.9 8.9
ゲーム用グラフィックス 8.9 8.9
プライマリディスク 5.9 5.9
PCMark8 Home accelerated 3.0
項目 定格 オーバークロック
Your Home accelerated 3.0 Score 4687 5012
Web Browsing - JunglePin 0.318 s 0.306 s
Web Browsing - Amazonia 0.131 s 0.134 s
Writing 4.74 s 5.34 s
Photo Editing v2 0.155 s 0.103 s
Video Chat v2 / Video Chat playback 1 v2 30.0 fps 30.0 fps
Video Chat v2 / Video Chat encoding v2 33.0 ms 33.0 ms
Casual Gaming 113.8 fps 125.9 fps
Benchmark duration 35min 48s 35min 23s

「CINEBENCH R15」オーバークロックスイッチOFFでの動作結果

「CINEBENCH R15」オーバークロックスイッチONでの動作結果

オーバークロックは3Dゲームで恩恵を受けられるか?

ここまでの結果は満足できるものだったが、3Dゲームでは果たしてどうだろうか。3Dグラフィックス処理能力を中心としたゲーム向けの性能を測る定番ベンチマーク「3DMark」のFire Strikeで検証を行ってみよう。結果としては、いずれの数値においても確かな向上が見て取れた。特にPhysics ScoreがCPUのクロック上昇により大きく向上し、総合スコアアップに貢献している。Graphics Scoreも上がっているが、そもそもデフォルトクロックの時点で通常のFire StrikeのFPSが60を超えており、むしろGeForce GTX 980自体の性能の高さが際立つ。国産MMOの雄「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」のベンチマーク キャラクター編でも確かな性能アップが見て取れる。ただし、連続してベンチマークを回し続けていると、ちょっと低めのスコアが確認できることもあった。GeForceのターボクロックはGPUコアの温度に余裕がある場合に限り上昇するものなので、あまりにも高い負荷が続くとクロックが上がりきらないのかもしれない。

Futuremark 3DMark
項目 Fire Strike
1.1
Fire Strike
Extreme 1.1
Fire Strike
Ultra 1.1
定格 オーバー
クロック
定格 オーバー
クロック
定格 オーバー
クロック
3DMark Score 11274 11693 5475 5870 2978 3104
Graphics Score 13364 13707 6039 6179 2911 3022
Physics Score 11479 13075 11472 12976 11420 13078
Combined Score 5127 5174 2719 2762 1539 1602
Graphics Test 1 63.40 fps 65.36 fps 32.74 fps 33.12 fps 16.24 fps 16.82 fps
Graphics Test 2 53.63 fps 54.77 fps 21.92 fps 22.24 fps 10.37 fps 10.78 fps
Physics Test 36.44 fps 41.51 fps 36.42 fps 41.20 fps 36.26 fps 41.52 fps
Combined Test 23.85 fps 24.07 fps 12.65 fps 12.85 fps 7.16 fps 7.45 fps
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
設定 定格 オーバークロック
スコア 評価 スコア 評価
1280×720【最高品質】 23000 非常に快適 24048 非常に快適
1920×1080【最高品質】 16017 非常に快適 16604 非常に快適
2560×1440【最高品質】 10468 非常に快適 10687 非常に快適

オーバークロックによる電力消費量の違い

最後に、オーバークロックスイッチON/OFF時の消費電力を比べてみよう。意外なことに、Windows 8.1のアイドル状態では、ほぼ差が見られなかった。負荷がほぼ何もない状態では消費電力は変わらないようだ。3DMark実行時の最大消費電力では、37Wの違いが確認できた。この30W強の違いとベンチマーク結果を比べて、どう感じるかは人それぞれだろう。個人的には、いつでもスイッチ一つでブーストできる点も踏まえるなら、オーバークロックの価値は"アリ"だと感じた。

消費電力の調査結果
状態 定格 オーバークロック
最低【Windows 8.1 アイドル時】 51W 52W
最高【3DMark実行時】 298W 335W

ハイエンドパーツの性能をさらに引き上げるOverClock MASTERPIECE

「MASTERPIECE i1460PA2-DOC-CL」のスペックはそもそも極めて高い。動作クロックが高くゲームに向いたCore i7-4790Kと、高い性能と低い消費電力を両立したGeForce GTX 980を搭載しているのだから、その時点で最新のゲームタイトルすら余裕で遊べてしまう。だが、ただ単にハイエンドパーツを集めただけでは、ほかの製品となんの違いもない。本来はユーザーが自己責任の元で行わねばならないオーバークロックを、安全かつ簡単に行えるという付加価値こそ、G-Tuneの最高峰である証といえるだろう。この冬の注目ゲームには非常に負荷の高いタイトルも含まれている。また液晶ディスプレイの解像度やスケーリング機能が急速に進化しており、性能を上げればその分ゲームをよりリッチに楽しむことができるようになった。年末年始は「MASTERPIECE i1460PA2-DOC-CL」のようなハイスペックPCで、ゲームにいそしみたいものだ。

※ここで紹介した各パーツは、今回試用した機種のものです。出荷時にメーカー、型番などが変わる可能性もあります。ご了承ください。

標準スペック

メーカー マウスコンピューター
型番 MASTERPIECE i1460PA2-DOC-CL
CPU インテル Core i7-4790K
メモリ 16GB PC3-19200 DDR3
HDD 2TB SerialATAIII
チップセット インテル Z97 Express
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
グラフィックス NVIDIA GeForce GTX 980
OS Windows 8.1 Update 64ビット
LAN ギガビット(10/100/1000)LAN
インタフェース USB 3.0×6(前面×2、背面×4)、USB 2.0×4(前面×2、背面×2)
サイズ W219×D471×H499mm
ディスプレイ
価格 219,800円(税別)

上記スペックは、あくまで構成の一例だ。BTOを駆使して、ぜひ自分好みの一台を作ってみてほしい。

価格・構成については、2014/12/12(記事作成日)現在の情報です。最新情報についてはマウスコンピューターのサイトにてご確認ください。