IT分野のトレンドキーワード

そんな栄藤氏は、現在のIT分野におけるトレンドとして「ITの進展による効率化・融合化・分業化」を挙げる。これはつまり、「今までIT化されていなかった既存のサービスを、ITで効率化すること」だ。たとえば世界で展開する配車サービス「Uber」や、宿泊先を探す旅行者(ゲスト)と空き部屋を貸したい人(ホスト)を仲介するサービス「Airbnb」などが代表的な例として挙げられる。

ITによって既存サービスを効率化

従来であれば、1次卸業者や2次卸業者などがサービスの提供者と受け手側の間に入っていた部分をIT化することで、安価な手数料でサービスを提供できるようになるというわけだ。

もうひとつのトレンドは「APIエコノミー」。栄藤氏は「大きな会社に気の利いたサービスはできない」と仮定し、大企業が提供するAPIを使って、別の企業がコンシューマ向けサービスを作る仕組みを紹介する。それぞれの得意分野で役割分担するようなイメージである。

すでにシリコンバレーでは、簡単に決済ができる「Stripe」や、オンライン認証を行う「Okta」など、APIを使って特定の機能だけを提供するB2B企業が出現しているという。栄藤氏は、ドコモもこうしたAPI化を進めていくべきだと述べている。

シリコンバレーではAPIで特定の機能を提供するB2B企業が多く出現

栄藤氏が手がけるもう一つのプロジェクトが、シストラン、フュートレックらと10月に設立した合弁会社「みらい翻訳」だ。ドコモのモバイルサービス基盤と、シストラン、フュートレックの技術を融合させ、翻訳技術の開発及びサービス提供を行っていくという。

こうしたジョイントベンチャーの成功確率は、単独での起業に比べて50%未満。それでもリスクをとることに踏み切ったのは、スタートアップ文化を導入して同一性を改め、多様性のあるチームを作ることが必要だと判断したからだ。

果たして、「39works」と「みらい翻訳」は、大企業ならではの課題を克服できるのか。ドコモがイノベーションを起こせるかどうかは、栄藤氏の手腕にかかっている。 (記事提供: AndroWire編集部)