前述したように「学校蔵プロジェクト」の電力の一部を担っているのは、ソーラーフロンティアが製造する太陽光発電システムだ。そこで同社 執行役員 知財戦略室室長であり工学博士でもある櫛屋勝巳さんに、お話しをうかがった。櫛屋さんはこのプロジェクトのメンバーである東大IRS3での客員教授も務める。

櫛屋さんが真っ先に口にしたのは、実発電量の高さ。「弊社が提供する太陽電池モジュールは『CIS太陽電池』となります。この『CIS太陽電池』の最大の特徴は、温度・影の影響が少なく実発電量が多くなるということです。尾畑酒造さんの太陽光発電システムをご覧になってこられたならわかると思いますが、あのプールの周囲には樹木が茂っています。落ち葉がモジュールに落ちたとしても、比較的に安定した発電が可能です」とCIS太陽電池のメリットを語った。

「新潟雪国型メガソーラー(2010年稼働開始)」および「新潟第二メガソーラー(2014年稼働開始)」。定格発電規模7.95MWで、年間発電量は約848万キロワットアワー/年(一般家庭1,480件分※)におよぶ。※太陽光発電協会「表示に関する業界自主ルール」より算出

また、こうも付け加える。「『学校蔵プロジェクト』は、雪国である佐渡島で実施されていますが、実はソーラーフロンティアは積雪対策にも実績があるのです。というのも、2010年に新潟県新潟市において日本初の商用発電所(除電力会社)『新潟雪国型メガソーラー』を設置しました。このメガソーラーにより、雪国での最適傾斜角の検証、積雪地での最適なパネルの高さ検証、環境保全に配慮した架台建設といった、雪国ならではの課題解決に必要なノウハウを取得しています。『学校蔵プロジェクト』の太陽光発電システムでは、このメガソーラーで培ったノウハウや経験を生かしています。また、建設にあたっては佐渡島現地での資材調達を優先しました」。

「実はCIS太陽電池と佐渡島は、意外なところで相性が良いのですよ(笑)。佐渡島では白壁に黒瓦の切妻屋根という建築様式が非常に多く、深みのある黒色で反射光も抑えられたCIS太陽電池は、黒瓦の屋根の上に設置しても違和感はないと思います」とも語った。

黒瓦で統一された佐渡島の家屋

旧西三川小学校の校舎も黒瓦だった

分散型発電が地域発展に貢献

櫛屋さんは、佐渡島のような地方で太陽光発電を活用することのメリットについて話してくれた。「化石燃料を利用した巨大な発電所は、ビルや家屋が密集する都市部の電力をまかなうには現在のところ必須でしょう。ですが、人口密度の低い地方、特に島しょ部で巨大な発電所を構えるのは、建設費や維持費を考えればコストが割高になってしまいます。今回の『学校蔵プロジェクト』のように、企業や家庭がそれぞれ発電を行い分散化すれば、巨大な発電所にかかるコストが低減され、そのぶん地域振興に役立てることができます。結果、地域の活性化につながるのではないかと考えます」。分散型発電を進めることで、過疎が進む地域の活性化を期待できるということだ。

最後に櫛屋さんは「佐渡島は、面積的にも人口的にも、何かの取り組みを試験的に行うのに最適な規模なのです。今回の『学校蔵プロジェクト』で培ったノウハウがさまざまな地域に波及し、それぞれの特性に合ったモデルケースに姿を変えて実現されると良いですね」と、プロジェクトがもたらす効果について語り締めくくった。

太陽光発電は分散型発電というモデルを通して、社会的な命題である再生可能エネルギーへの転換に加え、地域興しにもつながるということがわかった取材だった。

トキの生息地というだけでなく、豊かな自然が残る佐渡島。再生可能エネルギーのさらなる普及が必要だろう