プロサッカー選手になる前は「会社員」だった!
北澤氏は日本代表に選ばれるほどの実力を持ったサッカー選手であったが、実は、会社員経験もある人物。今のプロサッカー選手とは異なるキャリアを歩んだ北澤氏は、当時を振り返って次のように語る。
北澤氏「『サッカーチームと会社じゃ違うだろ』と感じる人もいると思いますが、実は僕、本田技研工業で会社員をしていたんです。当時の日本にはプロサッカーリーグがありませんでしたから。サッカー推薦はしてもらいましたけど、就職活動をして採用面接も受け入社しました。
本田技研では入社後、会社の仕組みを知るために、大卒高卒問わず現場に入らなくちゃいけないという決まりがあって、僕は面接のときに『デザインが好きですね』と言ったからか、塗装の現場に配属されました。『確かにデザインだな…』と思いましたね(笑)。そこでバイクのタンクの塗装や修正の仕事をしていました。サッカー部の練習はその後です。会社員をしながらサッカー選手をやるという時代だったのです」
日本のプロサッカーリーグであるJリーグが誕生したのは1993年。それ以前は、社会人実業団に所属して仕事と練習をこなすのが一般的だったそう。この2足のわらじの経験が、今の北澤氏をつくっているのだ。
目標を明確にすることの重要性
採用面接では「10年後にどうありたいですか?」という質問をされることもあるだろう。2003年に現役を引退した北澤氏の今後の目標は何だろうか。
北澤氏「21年前にスタートしたJリーグは『世界と戦える日本にしよう』という目標から始まりました。僕の今の目標は『ワールドカップで優勝』です。まあ、10年以上前から言い続けているんけどね(笑)。選手として出場するのではなくても、自分が何ができるかが道筋となります。その中で、僕がやるべき取り組みが決まっていくのです。皆も、何かしらの夢を持っているでしょう? 『自分はこういうことがしたい』という考えが。それは仕事として成立することかもしれないし、しないかもしれない。そういう目標は表に出してみた方がいいのです」
目標設定の重要性は皆が理解しているが、北澤氏はそれを表に出すことが大切だと語る。その意義とは?
北澤氏「目標を表にだすことが、大きな原動力となるからです。それに当たってやるべきは、『自分がどこを目指すか』を明確にしておくこと。そうでないと何をしていいかわからなくなってしまうのです。自分の行き先は自分で決める、それが大前提です。そうすれば、ちょっとずれることはあるかもしれないけど、大きくそれることはないですから。後は口に出してアクションすれば、いろいろな人や物事が具体的に動き出します。『口で言うだけ?』と思うかもしれないですけれど、アクションを起こす上では大きなウエイトを占めます。そういった感覚をつかめると、その後の行動も変わってくると思います」
サッカー元日本代表であり会社員も経験した北澤氏は、講演会で「自分を知ること」「目標設定」の大切さを力強く語った。それは自らの経験や「ワールドカップ優勝」という大きな目標を追いかける中で築き上げられた、北澤流人生論である。今回の講演は就職活動をする学生に対して行われたものだが、「自分はどういう人間か」「何ができるのか」を徹底的に分析し、目標に向かうその姿勢はすべての人の参考となるだろう。