他人の意見を取り入れる方の人間でありたい
――ご自身も、周りの方に対して「こうした方がいいんじゃないか」とアドバイスされた経験はありますか?
ありますあります。反応は人によりますよね。「それいいっすね」と実行するやつと、「あ、はい」と言ってまったく実行しないやつ(笑)。その意見が合っているかは、わからないですよ。わからないけど、僕は前者でありたいなと思いますね。
――例えば会社で上の方になってくると、後輩へのアドバイスをためらうという場面もあるようですが…
僕は、悪意がなければ何を聞いてもいいし何を言ってもいいと思ってるんですよ。身内って絶対悪意はないから、好きなこと言うじゃないですか。それはありがたいですよね。他人で、悪意なくそういう風に言ってくれる人が多ければ多いほど、自分の気づきがいっぱいあるから、ステージは上がっていくと思うんです。だから上司の人も、悪意がないなら言っていいと思うんですよ。セクハラ、パワハラには気をつけてほしいですが。
本当に、純粋にその人を思ってるなら言っていいと思うんですよね。だってその人のためを思っているのに言えないというのは、自分が「いやな上司と思われたくない」という保身だから。どちらがいいか考えたら、保身ではなく、相手のことを思う方を取った方がいいんじゃないですか、ということですよ。それだけですね。
――たしかに…
自分が口うるさいと思われたくないとか、保身を気にしてるやつほどかっこ悪いことはないと思うので。…けっこういいこと言いましたね(笑)。上司が保身に走っていたら、そりゃ下はついてこないと思いますよ。「自分のことしか考えてないな」って、一番悲しいことですから。
コミュニケーションとは?
――最近だと、「コミュ力(コミュニケーション力)」に悩む人もとても多いです
それは、自分が得したいからですね。コミュニケーションで、自分にメリットを考えてるからですよ。相手にメリットを与えようと考えたら、コミュニケーションなんて何も怖くないですよ。…またちょっといいこと言ったんじゃないですか?(笑)
――とても勉強になります! 例えば嫌いな人が出てきたら、加藤さんならどう接するんでしょうか?
嫌いにならないことですね。
――いいところを見つけようとするのでしょうか?
……ゼロ(笑)。ゼロ。「このやろう、腹立つな」と思うじゃないですか。でも、ガッと向き合って話す時は、もうゼロにしようと思っています。
これはね、ずーっとできていなかったんですよね、僕も。「このやろう」と思って話すときは、ちょっとした揚げ足を取ったり、言葉尻をとらえたりしたくなるんですよ。するともう、相手はどんどん頑なになっていって、何も話が進まなくなるんですよ。それでお互い何の意味もなくなってしまう。どちらかがゼロの方にプラスしてあげたら、水が流れるんですよね。最近気づいたんですけど(笑)。例えば仕事で何年も平行線だった人に対して、自分がちょっと進んだら違う展開になったりとか。「あ、こういうことなんだ」というのは気づきました。別にそこから、プライベートで遊ぶわけでもないですから。
――仕事の場ではスムーズに
いくようになりました。これは!
――ゼロへの持っていきかたはありますか?
こちらが正義で相手が悪だと思うから腹が立つじゃないですか。相手にあるのは悪ではなく、相手の正義だと思えば、ゼロになるんですよ。悪だと思うから「このやろう」って、「おかしなこと言ってんじゃねえよお前よ~間違ってんだよ」と思っちゃうんですが(笑)。その人にも正義があるのかなと多少理解すると、心の中にスペースができますよね。バリアーをはっていたのが、くっと空くから、相手も入りやすくなるんじゃないかな、と思いますけどね。
――なるほど!
……って、僕が出会った一流の人たちに影響されました(笑)。だから本をさらに読んでいただければ(笑)。
――ありがとうございました
『一流の理由(わけ)』
各界の第一線で活躍する人々に、加藤浩次が1時間丸ごと徹底的にインタビューする人気対談番組「加藤浩次の本気対談! コージ魂!!」(BS日テレ 毎週日曜よる10時から放送中)を書籍化。これまでゲストに迎えた76名の中から、樹木希林さん、倉本聰さん、野村克也さんなど、10名の「一流」の素顔に迫った1冊となっている。異例のカンペなし、台本なしにこだわった、加藤浩次だからこそ聞けた、10人の「生き方」には、生きるヒント、働き方のヒントが凝縮されている。