「女性の台頭」、「身体2.0」、「新しいシニア」

そして「社会的なトレンド」の話題へ。ここからは、同社の本社があるアメリカの特色が感じられる内容だと前置きした上で、最初のテーマは「Female Rising/女性の台頭」。同社の検索システムにおいて「女性」というキーワードは、いかなる言語でも常に上位にあり、いわゆる「良妻賢母」なイメージでなく、女性のリアルな写真を必要としているという。同社は、FacebookのCOO シェリル・サンドバーグ氏が率いる、女性の地位向上を目指す非営利団体「LEAN IN(リーン・イン)」とのコラボにより、さまざまな年齢の女性と、彼女たちを支持する人々の力強い描写に特化した写真を集めた「Lean Inコレクション」をオープンさせたという。実際にサムネールを眺めていると、丁寧にセットアップして作り込んだ写真ではなく、スナップショットのような雰囲気の写真が多いのが印象的だ。

社会的なトレンドのキーワードは「Female Rising/女性の台頭」、「Body 2.0/身体2.0」、「The New Old/新しいシニア層」の3つ

5番目のキーワードである「Body 2.0/身体2.0」では、本当にブランドが必要としているのは、キャットウォークをするようないわゆる「モデル体型」のボディではなく、リアルでありのままのボディだという。実際に米ユニリーバのボディ・ケア製品ブランド「Dove」の広告では、さまざまな人種のポッチャリ体型の女性モデルを採用しているという。こうした例を挙げて、今必要とされるのは「嘘っぽい写真」ではなく「ありのままの写真」であることを、あらためて強調した。最後のキーワード「The New Old/新しいシニア層」では、化粧品メーカーの広告ポスターでは、イギリスの女優シャーロット・ランプリング(現在68歳)が起用されていることなどを例に、生き生きとしたシニアの写真に需要が高まっていると述べた。

必要とされるのは、ウソのない現実的な写真

続いてのテーマは「写真や動画のクラウドソーシング」。ビジュアルによるコミュニケーションが盛んな昨今では、ごく普通のユーザーの「写真を見る目」も非常に洗練されており、作られた写真、嘘くさい写真では通用しなくなったという。そこで、同社は2008年から写真共有サイト「Flickr」から、広告として価値のある優れた写真をよりすぐり、ライセンス販売を行っているという。自然現象の決定的瞬間など、その時その場所に立ち会わなければ撮影できないような写真は、いくら優れたプロカメラマンに依頼しても撮れないからだ。

また、iOS用アプリ「Gettiy Images Moment」は、今必要としている写真や動画をアナウンスし、それを見たユーザーがiPhoneで撮影して送信。その中から同社のエディタが選別してライセンス販売するという。さらに、スマートフォンの写真に特化した写真投稿サイト「EyeEm」や動画投稿サイト「Vimeo」とパートナー提携を結び、アップロードした写真や動画をストック素材としてライセンス販売できる仕組みが用意されているということだ。こうした中で、必要とされているのは「AUTHENTICITY/信頼感・現実味」だという。

写真・動画共有サービスと提携を結ぶことで「AUTHENTICITY/信頼感・現実味」を追求

美しい写真は、観る者の感情を揺り動かし変化をもたらす

さらに小林氏は、厳選された写真を多数取りそろえた「Getty Images Prestige」の提供を開始したことを紹介。スタジオでの撮影シーンをはじめ、ここ1~2年に海外のフォトアワードにおいて受賞した何枚かの作品について裏話を交えて解説した。「『美しい写真』とは、観る者の感情を揺り動かし、変化をもたらす」と語ったのち、2012年に16言語によって同社のサイトで検索された「コンセプトキーワード」を1位から100位までパネルに掲示。その第1位は「LOVE(愛)」であったことを明かした。最後に、同社が提供するビジュアルトレンド情報サイトStories & Trendsを紹介し、セミナーを締めくくった。

「美しい写真」とは、観る者の感情を揺り動かし、変化をもたらす

検索キーワード「LOVE」でヒットした写真の数々