――ボーカルワークスのアルバムでは恒例のオリジナル曲ですが、まずは「なないろスコア」について教えてください
霜月「これまでの5枚と同じで、私が活動を通して感じている現在の気持ちをリアルに残したいと思って作っているのが表題曲になります。ちょうど2年くらい前から、本格的に楽曲提供のお仕事をスタートしていて、作曲家として他のアーティストさんと絡んだりする機会が増えてきたんですけど、曲を作った段階ではあくまでも自分の中のメロディなんですけど、それを人に渡すことで、自分が表現するのとは全然違う、想像を超えた変化が起こるんですよ。同じ曲でも、歌う人が違うと表現も全然違う。違う歌詞が載ったら世界観も変わるし、同じ音符なのに、ミュージシャンが変わると表現方法も変わってくるのがすごく面白いなって思いました。自分だけのメロディ、"譜面(スコア)"が人に渡ることで、"なないろ"の変化を起こしていくのがすごく面白い。その変化を怖がるんじゃなくて、楽しんだほうが幸せだと思うし、そうやって楽しむことが音楽をするということなんじゃないかって最近感じていたので、それをド直球に書いたのが『なないろスコア』になります。そのままですね(笑)」
――"なないろ"というのは変化するという意味合いですね
霜月「そうですね。さまざまな変化という意味で"なないろ"という言葉をセレクトしています」
――「なないろスコア」の制作はスムーズでしたか?
霜月「"アルバムの企画スタート"イコール"オリジナルの曲作り"になるわけですが、最初にやらなければいけないのがタイトル決め。アルバムリリースを発表する段階でタイトルが決まってなければならないんですよ。つまり、その段階で、曲のテーマをしっかりと決め込まなければならない。なので、今の自分はどういうことを考えているかについて、自分自身と対話するんですけど、それが一番時間のかかる作業ですね。それさえ決まってしまえば、書きたいことはある程度固まってくるわけですから、あとは具体的に落とし込んでいくだけなので、すごくスムーズに進んでいきます。ただ、自分の言いたいことって、そんなにブレないじゃないですか。すると、これまでに作ってきた曲とテーマがそんなに変わってこないわけですよ」
――2年ごとに変わっていくわけではないですからね
霜月「そうなると、言いたいことはそんなに変わらないので、曲調的な差を意識して、少し悩むことはあります。やはり同じメロになるとまずいので、自分の言いたいこととリンクさせて、うまく差を出せたらいいなと思っています。そういう意味で、今回の楽曲では、これまでとは違うアレンジャーさんやミュージシャンの方にお願いしています。あと、スタジオでも"せーの"でレコーディングしてみたりしました。"せーの"で録ることで、ミュージシャンの方がお互いを意識しながら、練り上げていく変化のようなものを実際の現場で感じてみたかったんですよ。私自身もアコーディオンを弾くことで、その場でグルーブを感じながら個性を出せればいいなと」
――今回はアコーディオンを弾いているんですね
霜月「アコーディオンの機能のおそらく五分の一も使っていないと思いますが(笑)。でも、せっかく自分で持っている楽器だし、今後もライブなどでも演奏できたらいいなという気持ちもあったので、ちゃんとフレーズを入れ込んで自分で弾いてみました」
――もうひとつのオリジナル曲「Heretical Wings」は歌詞のみ霜月さんですね
霜月「これもやってみたかったことのひとつなんですけど、曲はコンペ形式で決めました。ちょうど自分もコンペに出して、人に曲を提供する機会があったのですが、実際に自分の歌う楽曲でコンペをやったことがなかったんですよ。自分自身が曲を提供するとき、これもひとつの音楽とのご縁だなって思っていたので、逆に自分の曲もコンペ形式でやってみたくて、今回のアルバムで初めてやってみました。収録曲もだいたい決まった段階だったので、アルバムのバランスを考えて、"アップテンポなマイナー調の曲で、なにか運命に抗う感じの曲"という、すごくざっくりした指定で曲を募集して(笑)」
――コンペ形式での曲選びはいかがでしたか?
霜月「こういった立場はもちろん初めてだったのですが、たくさんの曲を聴かせていただいて、こういうアプローチもあるのか、こういうイメージもあるのかって、すごく選ぶのは難しかったです。ただ、その中でも、自分が書こうと思っていたテーマと一致するもの、こういう曲がアルバムにあったらいいなと思う曲、そういった視点で選ばせていただいたのですが、実を言うと、これまではあまり自分に回ってくる曲じゃないんですよ。でも、せっかくの機会なので、そういう冒険もありかなって思いました。選んだ曲から、さらに想像を膨らませて、歌詞の世界観を作ったのですが、これも初めての経験だったので、すごく面白かったです。音楽との出会い方ってこういうのもありだなって、あらためて感じながら作り上げていきました。これもご縁ですよね」