“誰にでも使えるATM”を目指した第3世代

ATM設置台数がついに15,000台を突破した2010年ころには、セブン銀行ATMはすっかり身近なものとなった。コンビニが銀行取引の場として普及し、もはや店舗にはATMが設置されていて当たり前となり、セブン銀行ATMの進化は第3フェーズへと移行する。

次なるテーマは“誰にでも使いやすいATMにする”ことだ。使いやすいUIには正解というものがない。そこでセブン銀行では「顧客の評価に耳を傾ける」ということに注力してATMの操作性改善を進めた。具体的には、UIを検討、デザインした後にすぐに会議室などにATMを設置し、モニタ評価を実施するという手法を採用している。男女や年代、利用経験や頻度、利用するカードや機能ごとに利用者の目線の動きやそれぞれの操作時間を計測。そこから、一画面ごとにUIを検証していくという気の遠くなるようなモニタによって評価が行われた。

モニタ評価の結果、取引内容を誤解したまま操作を進めていたり、戻りたいときに必要なボタンが無かったりなど、UIの細かな改善点が見えてきたという。例えば、人間の視線は画面の左上から右下に流れるが、操作ボタンがその流れに沿った位置に配置されていなかったり、“連続取引”という言葉が誤解を生み、スムーズな操作が行えなかったりといった点だ。これらの調査によって、操作手順をステップ表示して現在の取引内容をカラー表現するといった変更が行われた。

モニタ評価の結果を踏まえ、操作性の改善が行われた。ここでは、“連続取引”という言葉を“続けてお取引”に変更し、またボタンの位置を右下に移動させている

こちらは、暗証番号入力時の操作手順をステップ表現したところ。現在操作している箇所以外の背景色をグレーに変更し、手順を把握しやすいようにしている

現金やカード、レシートなどの取り忘れ時の音声ガイダンスが変化したのも第3世代からだ。それまでは「現金が出ます」といった具体的なキーワードを含んだ音声が再生されていたが、これは安全性の面から不安を感じるという声があり、「お忘れ物にご注意ください」といった内容に変更された。さらに、ATMの前に顧客がいるかどうかをセンサーで感知し、ATMの前にいる場合は音声再生までのタイマーが延長され、受取りを急かさせることも無くなっている。同時に画面演出に合わせて取引時のチャイム音も変更された。これは、データの読み込み時間や動作の待ち時間のストレス軽減のためだという。また、より一層の見やすさ追求のため、ユニバーサルデザインフォントを採用。視認性や識別性、表示適正に優れており、年齢や性別、能力などに関わらず、できるだけ多くの人々にとって使いやすいデザインへと変更された。

新たに採用されたユニバーサルデザインフォントの一例。文字の視認性が向上し、より読みやすく、識別しやすくなっている

なお、操作性の追求は現在進行形で行われているものだ。全国に設置されたATMの操作状況はデータベースとして集計されており、どこの画面でどれだけ操作に戸惑っているかという分析が常に進められている。例えば、ATMの操作時間から混雑している店舗や時間を推測することも可能だという。

ここまでが、セブン銀行ATMのおおまかな歴史だ。次ページでは、現在適用されている最新のUIのディティールをチェックしてみよう。