医師や弁護士、システムエンジニアなどの専門職として会社に入社した場合、まったく別の業務に就くことはまずない。航空会社のキャビン・アテンダント(CA)も専門職で、CAとして入社したからには退職するまでCA以外の仕事をすることはないと思っている人も多いはず。
ところがJALには一時的にではあるもののCAを本社業務(地上職)に配属する制度がある。なぜ、CAを地上職に就かせるのか? その目的は? 実際に経験してみた感想は? 実際に地上職を経験している4人のCAに話をうかがって、理由を探ってみた。
“地上の生活”になれるのが大変
―― 一時的とはいえ、CAとして入社して10年ほど経ってから地上職への転属となるわけですが、すぐに慣れるものですか。
いえ、最初は大変でした(笑)。大変だったのは仕事の内容ではなく、毎朝同じ時間に起きて電車に乗って通勤する生活に慣れることです。CAはある程度の搭乗便は決まっているとはいえ、勤務日も出勤時間もまちまち。休みは土日と決まっているわけでもないですから。
――そうですよね。CAと地上職では生活パターンがまるで違いますから、それはCAの皆さんが地上勤務に就くときの共通の試練みたいなものでしょうね(笑)。一方で仕事にも早く慣れる必要があると思いますが、まったく違う仕事ですからとまどいもあったのでは?
私の仕事は乗客の皆様からいただいたCAへのマナーや接客についてのコメントに目を通し、それを現場にフィードバックするのが主な業務です。簡単に言いますと、コメントの傾向を分析し、お誉めいただいたサービスはより広めるようにし、そうでないものは今後繰り返さないようにするわけですが、実際はそんなに単純ではないのがヒューマンサービスの難しさだと実感させられました。お客様のご要望は一人ひとり異なりますから、ある方にとっては良い対応でも、違う方にはまた別の対応が必要になるものなのです。
誉め言葉がモチベーションに
――ヒューマンサービスは奥が深いんですね。月に700通ものコメントが届くそうですからいろいろな要望がありそうですが、嬉しいコメントもあるのでは。
実はご批判とお誉めの言葉は4対6くらいと、お誉めの言葉の割合の方が多いのです。せっかくお客様からいただいた誉め言葉ですから、なるべく本人に伝えるようにしています。
一度、「今回の旅行で一番(現地での滞在よりも)うれしかったのはJALのCAさんの対応でした」とのコメントをいただいたのですが、そのコメントが本人に伝わったタイミングがたまたま良かったことがありました。なぜなら、このコメントを伝えた当日、そのCAがフライトで大失敗をしてしまった日だったそうなんです。なので、このコメントが次のフライトのモチベーションになったそうです。それを聞いて私もこの仕事をしていて良かったなと思いました。