ミスをした際の基礎点は低くなってしまいましたが、ジャンプコンビーネーションのルールと合わせて考えると、2回行ったジャンプのどちらかで行う予定であったジャンプコンビネーションが、他のジャンプを行った時につけることができるので、点数の面では同じくらいになるのではないかと思います。
少し例を出してみます。
例えばフリー冒頭で3Tの2連続ジャンプを予定していたが、タイミングが合わずに2Tの2連続ジャンプになってしまったとしましょう。ジャンプコンビネーションのルールでいえば、あと2回ジャンプコンビネーションができるということになります。
ジャンプコンビネーションはトゥループまたはループ(Lo)で行うことが多いです。ただ、2Tはすでに2度使用しているため、ダブルジャンプの新ルールによって、ループジャンプを含んだ3連続ジャンプにするなど、2Tを使わないジャンプコンビネーションに変えなくてはなりません。
すなわち、演技後半で3Lo-2T-2Tというジャンプコンビネーションを予定していても、演技冒頭で3T-3Tのジャンプコンビネーションが2T-2Tになってしまった場合、後半に予定していたジャンプを3Lo-2Lo-2Lo等に変更しないといけないということです。ステップを挟んでジャンプシークエンスにすることも可能ですが、その際にもこの後に行う予定のジャンプのことも考慮しなければいけません。
さらにその後、同じ種類のトリプルを2回行い、どちらにもジャンプコンビネーションがつけられなかった場合、その後に予定しているジャンプの中でリカバリーを行わなければいけません。そして、それら全てを演技中に瞬時に判断しなくてはいけないのです。
ミスを想定した練習の必要性
かなり極端な例になってしまいましたが、このようなことが試合で起こらないとも限りません。ジャンプの順番等の作戦を立てることも、得点を得るために重要なことだと思いますが、ミスが起こることも想定し、日々の練習でリカバリーの仕方も練習しておくことが大事なのではないかと思います。
日本国内では全国各地で全日本選手権の予選が始まるなど、本格的にスケートのシーズンが始まりました。ルールが大きく変わり、選手たちには負担が大きかったオフシーズンだったとは思います。しかし、ジャンプやスピンなどの技だけにとらわれず、選手それぞれ練習してきたプログラムというすばらしい作品が見られることを、私は楽しみにしています。
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筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)
1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。