各作品のひと言コメントと採点(3点満点)

『ペテロの葬列』月曜20時~ TBS系

出演者:小泉孝太郎、長谷川京子、国仲涼子ほか
寸評:演出にキャストを生かす奥行きがあり、1話完結ではなく「続きが気になる」連ドラ本来のスタイルは評価されるべき。人間の「毒」を繊細に描いた本格派ミステリーなのに、謎解きや真相がサラッとしているのも同作の持ち味。ただ主人公の残酷な結末は、いい意味で視聴者の予想を裏切った。最終回のラストで続編を思わせる字幕があったが、金曜22時枠が最適か。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『HERO』 月曜21時~ フジテレビ系

出演者:木村拓哉、北川景子、杉本哲太ほか
寸評:前作から"変えた、変えない"のバランスがよく、「誰もが気軽に楽しめる」「安定の予定調和」でお手本のようなエンタメ作に。これだけのキャラが会話劇をしている以上、謎解きが淡泊なのは仕方なし……と言いたいところだが、1話完結にこだわらず2~3話完結にするなどの工夫が見たい。明らかに余力残しで終わったため続編は、ほぼ確定。もう少し逆境が見たい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】

『あすなろ三三七拍子』 火曜21時~ フジテレビ系

出演者:柳葉敏郎、剛力彩芽、風間俊介ほか
寸評:テーマやキャスティングで誤解を受けて視聴率こそ低迷したが、ドラマとしては文句なしの名作。応援だけでなく、人生や絆について考えさせられる名言も多く、キャストはもれなくハマリ役だった。昨今、絶滅しかけている人の良心を描いた感動作だけに、宣伝の少なさと、打ち切りを思わせる終盤の急展開は残念。連ドラのあり方とテレビ局のスタンスが問われる。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

『GTO』 火曜22時~ フジテレビ系

出演者:AKIRA、比嘉愛未、黒木瞳ほか
寸評:扱うテーマは、妊娠、自殺、イジメなど30年前の学園ドラマと変わらず、イマドキの高校生を描こうとした軽めの演出もズレていた。肝心の鬼塚もケンカが強いどころか涙もろく、原作から乖離(かいり)したキャラにしたのはなぜか。新たな要素として入れた鬼塚の過去も予想できるレベルであり、脚本からは終始意外性が感じられず。若手女優たちの熱演が希望の光に。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『東京スカーレット~警視庁NS係』 火曜22時~ TBS系

出演者:水川あさみ、生瀬勝久、キムラ緑子ほか
寸評:最後まで女性目線の刑事ドラマを貫こうとしたが、その印象は残らず。事件のジャンル、謎解き、刑事の魅力、チームワークなど、「これ」というものがなかったため、時折盛り込んだ笑いが浮いてしまうなど、脚本・演出の"ひともみ"が欲しかった。「東京五輪に向けて新たなセクションを作った」という設定だが、関西出身のメイン3人で違和感があったのも裏目に。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『警視庁捜査一課9係』 水曜21時~ テレビ朝日系

出演者:渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子ほか
寸評:安定の事件解決とすっかりよくなったチームワーク。見慣れたけど新鮮さを失わないのは、時事ネタを含めた事件を丁寧に扱っているからか。あの加藤清史郎くんが丸刈り姿でゲスト出演するなど、事件関係者にも工夫が見られた。ファンが気になる浅輪(井ノ原)と倫子(中越典子)の復縁も果たし大団円。さらに来月、スペシャルドラマを用意するなど抜け目なし。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『ST 赤と白の捜査ファイル』 水曜22時~ 日本テレビ系

出演者:藤原竜也、岡田将生、志田未来ほか
寸評:変人をそろえたSTメンバーと百合根(岡田)のやり取りはテンポがよく見やすい反面、セリフに既視感が色濃く出ていた。ただ藤原は対人恐怖症キャラや、「謎が解けてしまった」の決めゼリフなどで存在感を見せたのはさすが。最終回で来年公開の映画版につなげる謎を入れたのは、マイナス材料か。そもそも刑事モノなのに、極細の男性俳優をそろえた理由も不明。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆】

『若者たち2014』 水曜22時~ フジテレビ系

出演者:妻夫木聡、瑛太、満島ひかりほか
寸評:兄弟ゲンカや問題の連続など典型的な昭和のホームドラマだが、それは明らかに狙い。妻夫木や瑛太の演技力を引き出す演出であり、彼らの姿を通して生き方を問う作品だった。「熱く向き合って生きる人が少ないからこそ、ドラマで描く意義がある」ということか。実際、回を追うごとに世間の違和感は薄れ、絶賛の声もあった。ただ男性目線の描写が多かったのは残念。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『信長のシェフ』 木曜20時~ テレビ朝日系

出演者:玉森裕太、及川光博、志田未来ほか
寸評:タイムスリップ時代劇も目新しさがなくなり、セットや道具の粗さと、料理ばかりクローズアップする不自然さが目立った。時代劇に必要な"誠実さやスケール感"という観点で、大河ドラマ『軍師官兵衛』と比べられたのは不運。本能寺の変まで描かなかったが、再び深夜枠に戻しての続編や映画化はあるのか。ただ武田信玄役の高嶋政伸だけは別次元の演技だった。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『同窓生~人は、三度、恋をする』 木曜21時~ TBS系

出演者:井浦新、稲森いずみ、板谷由夏ほか
寸評:アラフォーの恋愛観を描いたリアルな作品と思いきや、往時の柴門ふみワールド全開。健太(井浦)の草食キャラも、あけひ(稲森)の思わせぶりなセリフ回しも、逆に懐かしさを覚えた。女たらしやDVなど男性の描き方などツッコミどころ満載で、徐々に心が動くような描写はごくわずか。不倫をテーマにする必然性もなく、単に大人の恋愛でよかったのでは。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『ゼロの真実~監察医・松本真央』 木曜21時~ テレビ朝日系

出演者:武井咲、佐々木蔵之介、真矢みきほか
寸評:武井の変人+天才キャラは、もはや安定の域に入ったが、全て事件解決モノであり新鮮さに欠ける。ただ、周囲に実力派おっさん俳優をズラリ並べた分、同枠のファンは落ち着いて見られた。なかでも佐々木は主役を食うほどの大当たり。母親の謎など、安易な予定調和で終わらせなかったのは大石静らしかった。続編可能な展開だが、平均視聴率10%では微妙か。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『昼顔~平日午後3時の恋人たち』 木曜22時~ フジテレビ系

出演者:上戸彩、吉瀬美智子、斎藤工ほか
寸評:上戸のモノローグから、男優のセレクト、夫のキャラ、映像の質感まで「全て女性のために作る」潔さがハマった。よく言われる軽薄な"昼顔妻"ではなく、純愛を貫く形でバランスを取ったが、脚本は普通の不倫モノという印象。結末の"罰"は、リアルとファンタジーの微妙なラインを追求したものか。ただ、3夫婦に加え、母親まで不倫関係者の設定は昼ドラ的。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】

『ラスト・ドクター -監察医アキタの検死報告-』 金曜20時~ テレビ東京系

出演者:寺脇康文、相武紗季、伊東四朗ほか
寸評:監察医という設定は、枠の視聴者を意識した分かりやすさから。事故死と他殺を織り交ぜた事件解決への展開がシンプルなのもテレ東らしかった。変人でトボけた寺脇と、見習いでムキになる相武の対比は明快。伊東、戸田恵子、マキタスポーツら同僚の存在感も上々で、各話ゲストも往年の名優を配していた。最終回の2時間特番を見ると、連ドラよりコチラの気が。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『家族狩り』 金曜22時~ TBS系

出演者:松雪泰子、伊藤淳史、遠藤憲一ほか
寸評:テーマ、映像ともに果敢なチャレンジが見られ、意気に感じたキャストがその技量を発揮。いずれも鬼気迫る演技で、役が憑依(ひょうい)していた。シリアスな展開と凄惨な描写が続く中、巣藤(伊藤)と渓徳(北山宏光)の絡みは、ほどよいアクセントに。中盤散らかり気味だった脚本も、最後は無難にまとめた。これくらいスタッフ側の熱とエゴを感じる連ドラがあってもいい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

『匿名探偵』 金曜23時15時~ テレビ朝日系

出演者:高橋克典、片瀬那奈、柴俊夫ほか
寸評:第2シリーズは、「謎解きに深みを加えて、上質な探偵モノにしよう」という意図は感じられたものの、アクションやエロとの相性が悪く、流れがブツ切れに……。犯人捜しも2転3転させつつ、極めてスムーズな展開で見応えに欠けた。視聴率は2年前の第1期から大幅ダウン。『特命係長 只野仁』終了から2年半、いまだ視聴者はあの高橋克典を引きずっている。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『アオイホノオ』 金曜24時12時~ テレビ東京系

出演者:柳楽優弥、山本美月、安田顕ほか
寸評:演出・脚本を手がけた福田雄一の妥協なきこだわりが凝縮。各キャラの濃い味つけ、マンガの静止画、実声優の起用、週替わりのエンディングまで、ここまでディテールを追求した作品は珍しい。完全に一皮むけた柳楽は、今後出演作が増えそうだ。ハマリ役続出の脇役陣では『エヴァ』の庵野ヒデアキ(安田)が出色。最終回のサプライズ出演も含め、全て出し切った。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆☆】

『金田一少年の事件簿N(neo)』 土曜21時~ 日本テレビ系

出演者:山田涼介、川口春奈、有岡大貴ほか
寸評:13年ぶりとなる連ドラだが、犯人とトリック予想を楽しむ、従来通りの金田一だった。犯罪のリアリティよりも、細かく設定されたトリックを読み解くクイズのようなコンセプトで、他ドラマとの差別化はできている。事務所の先輩から四代目を引き継いだ山田は、軽いキャラの役作りに工夫が見られたが、熱さにやや欠けたか。成宮寛貴が一人別格の存在感を発揮。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆】

『水球ヤンキース』 土曜23時10分~ フジテレビ系

出演者:中島裕翔、山崎賢人、高木雄也
寸評:どこまでも熱く、単純で、明るい定番の夏モノ学園ドラマ。肝心の水球シーンは驚くほど少なかったが、その分、友情や成長を描いた脚本に好感が持てる。高校生の口から「誇りに思う」「ありがとうな」「好きだ」、そんな赤面モノのフレーズがポンポン飛び出し、清々しい気持ちになれた人は多かったのではないか。出来すぎのハッピーエンドだが、それすら心地いい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『おやじの背中』 日曜21時~ TBS系

出演者:田村正和、松たか子 ほか週代わり
寸評:10人の脚本家と10組の名優をそろえ、内容は一定水準をキープ。同じテーマながら初回の岡田惠和と、最終回の三谷幸喜を見比べるだけでも楽しかった。ただ希少な試みだけに、1話60分にこだわらず90分や120分の拡大枠で、技量を存分に発揮して欲しかった気もする。「毎週1からキャラや物語をつかまなければいけない」この形式は現代の視聴者に不向きか。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。