いざ撮影を始めてみると、EVFが小さい上に色が滲んで非常に見にくい。サイズは仕方がないにしろ、カラーEVF搭載家庭用ビデオの黎明期すら思わせるファインダー品質は、さすがに見直していただきたい。ちなみに、このファインダーもX-5の23万ドットから20万ドットへと解像度が下がっている。さらに、EVFで使用していても、一度電源を入れ直すと液晶画面での撮影状態で起動してしまい、そのたびにEVFボタンを押さなければならないのも不便だ。思うに、XG-1のファインダーはあくまでオマケであり、できるだけ液晶画面で使ってほしいという設計なのだろう。

とはいうものの、ファインダーはやはりカメラの正義だと筆者は思うのだ。特に、高倍率ズームを活用して望遠撮影をするときは、背面液晶よりフレーミングもしやすいし、カメラを両手と額の3点で支持できるので手ぶれも抑えられる。

今回は羽田空港で飛行機を撮ってみた。さすがは光学52倍ズーム、約24mm相当の広角側では駐機場を目一杯フレームに入れることができる一方、約1,248mm相当の望遠側では遠くに駐機している飛行機のコクピットを、パイロットの表情さえはっきりとわかるほどのアップで狙えるのだ。

【左上】35mm判換算で24mm相当となる広角端で撮影。歪みも少なく、端正な描写(原寸大画像を見る) 【右上】中央の機にズ-ムイン! 1,248mm相当の望遠端では、パイロットの表情まで見える(原寸大画像を見る) 【左下】超望遠撮影ならではの、こんな表現も楽しい。967mm相当 1/416秒 f5.3 ISO100(原寸大画像を見る)

また、約1,600万の高画素とはいえ、1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサーでもこれほどよく写るのかと感心した。なお、いつものように作例を原寸大サイズで掲載してはいるが、このカメラは画全体を見るべきで、等倍画像を見てあれこれ言うものではないと思う。

XG-1は約4倍(光学ズームと合わせて約208倍)のデジタルズームも搭載するが、画質の低下に加え、被写体を見失いやすくなってしまうため、実際に使うことはまれだろう。

【左】晴天下では、非常に立体感のある描写が可能だ。363mm相当 1/714秒 f4.2 ISO100(原寸大画像を見る) 【右】ジェットエンジンの排熱によるガウスも写る。512mm相当 1/357秒 f6.7 ISO100(原寸大画像を見る)

【左】フォーカスとデフォーカスの描写が心地良い。604mm相当 1/714秒 f6.8 ISO100(原寸大画像を見る) 【右】歪みのない、すっきりした窓枠が実に気持ちいい! 39mm相当 1/193秒 f3.7 ISO100(原寸大画像を見る)

【左上】198mm相当 1/714秒 f4.5 ISO100(原寸大画像を見る) 【右上】テレマクロ機能はない。512mm相当 1/278秒 f4.1 ISO100(原寸大画像を見る) 【左下】三脚を使えば、夜景もキレイに撮れる。102mm相当 1/3.5秒 f7.2 ISO100(原寸大画像を見る)

前述の通り、ファインダー(EVF)があるおかげで、上昇する飛行機や離陸の瞬間なども狙える。ただし、こういった被写体を狙うときも、フォーカスモードは「シングルAF」か「マルチAF」にしておく方が良さそうだ。筆者の経験では、「自動追尾AF」を選ぶと、AFポイントが被写体を追うのをあっさりやめてしまい、AFポイントがあちこち暴れて、ピンボケ写真を量産する羽目になった。ただし、被写体の速度や大きさ、撮影者からの距離による影響もあるかもしれないし、別途「コンティニュアスAF」や被写体が人物なら「顔検出AF」もあるので、それらを使ってみる手もある。お子さんの運動会など、大切な撮影の前にはあらかじめ何度も試してみて、クセを十分に理解しておくことが大切だ。

【左】ファインダーがあるので、テイクオフの瞬間も狙える(原寸大画像を見る) 【右】AFモードは「シングルAF」「マルチAF」「自動追尾AF」の3種類。このほか「顔認識」「コンティニュアス」も使える。「ペット認識」も可能

「TV」モードで1/100秒、F8、ISO100で流し撮りを試みたが、露出オーバーに(原寸大画像を見る)

なお、動体撮影時にもうひとつ注意したいのは、必須の表現ともいえる流し撮りだ。XG-1には、X-5になかった「TV」(シャッター速度優先)モードが存在する。だが、晴天下でシャッター速度1/100秒、絞りF8、ISO100で撮影しても、XG-1では露出オーバーとなる。絞りはF8が上限、ISOは100が下限なので、事実上流し撮りはできないということだ。すなわち、XG-1のTVモードは、むしろ高速シャッターのためにある、ということだろうか。