――食卓のシーンでは珍しい料理が出ていましたね。肉じゃがにイカが入っていましたよね?

ありましたね! 炒め物のような料理です。また、それをシャーリーが箸を使って器用に食べるんですよね(笑)。

――彩音の一家の食卓は、行儀の悪い弟が叱られるなど、彩音がどのような環境で育ってきたのかを知ることができるシーンでもあります。高橋さんはどのような「食卓」で育ちましたか?

お父さんが帰ってくるのが遅かったので、だいたい私と妹で食べて、お母さんはお父さんの帰りを待っていました。家族団らんは、私がモーニング娘。で東京に出て、実家に帰った時ぐらいが初めてだったような気がします。朝起きると、お父さんはすでに仕事に行ってて。14歳で上京したので、あまり家族団らんの思い出はありません。

小さい頃はそれが当たり前なので、あまり違和感なかったんですけど、お父さんが仕事休みの日は時々焼き肉に行ったりして。そういう時間はとても幸せでした。妹と2人で食べるご飯も楽しい一時ですけど、家族全員で食べることがあまりないからこそ、ありがたみは感じますね。

――その後、モーニング娘。に入ると食生活が変わったと思います。

どうしてもお弁当が多くなっちゃいますね。その時の私にとっての団らんはメンバー。だから、卒業してからのほうが寂しくなっちゃいました。楽屋も一人ですし(笑)。でも、モー娘。にいる時は一人で行動することもあって、心配されるタイプだったんですよ。吉澤(ひとみ)さんとかが「高橋どこ行った?」って(笑)。ただ、いざ一人になるとにぎやかな楽屋が恋しいですね。

――今の結婚生活はどのような食卓ですか。

外食が多くなっちゃってますね(笑)。でも、どちらかが早く終わる時は作ったりしています。

――ブログには「入籍後、初の手料理」としてオムライスの写真がアップされていました。ケチャップで「ハート」の絵と「ABE」というメッセージが書き込まれていて、まさに幸せの象徴だなと。

あはっ! なんであんなこと書いちゃったんでしょうね(笑)。もうちょっとかわいく書けばよかったです。まさに、"なかなか料理を作らない人の手料理"でしたね。でも、もともと全くやってなかったので、それに比べればやるようになりました。

――この映画で、彩音は遠回りをしながらも最後は大切な事に気づきます。高橋さんはそのような経験をしたことありますか。

やっぱり実家から離れて親の有り難みを知ることができたのは、大きなことだったと思います。毎日ご飯を作ってくれてたんだなとか、毎日洗濯してくれて、掃除をしてくれて…。当たり前のことができているお母さんは偉大ですね。その時は感謝の気持ちを伝えることはできませんでしたが、今なら言えます。結婚したのでなおさらですね。十代の時、お母さんみたいになりたいなんて言いませんでした。母は21歳で私、23歳で妹を産んでいます。その歳に自分が並んだ時に、やっぱりお母さんはすごいなと…。

――そんな高橋さんが今は家庭を築いています。結婚発表後、ファンとCMを撮影する機会があり、皆さん祝福してくれたそうですね。その反応は予想していましたか。

どんな反応をされるか分からなかったです。応援してくれている人がいるからこそ、この仕事ができていますし、裏切ることではないんですけど…きっとショックを受けている人もいると思うんです。急な発表になってしまったので、その分、皆さんがどんな反応をするのか全く分かりませんでした。

確か、そのCM撮影を行ったのが、記者会見の少し前。横浜で会見を開いたんですが、CM撮影も横浜で。すぐ入籍を控えていました。あっ。ちなみに、その時は大雪(笑)。気になったのは男性ファンの方の反応だったんですが、皆さん「おめでとう」と祝福してくださいました。中には「結婚おめでとう」と書かれた横断幕を作ってくださった方もいて。直接、感謝の気持ちを伝えるために、スタイルブックにサインをして皆さんにお渡ししましたが…感極まって泣いてしまいました。本当にすっごく、うれしかったんです。

モーニング娘。を卒業してからは、やっぱりファンの方と直に接する機会が少なくなります。ミュージカルなどの舞台は対面することはあっても一方的。今まではファンに向けて歌を届けていたのが、舞台上ではその作品の世界観があって、その姿は私ではありません。今、こうして過ごしていると、ファンの方と接する機会が貴重な時間だったんだと、あらためて感じます。

■プロフィール
高橋愛
1986年9月14日生まれ。福井県出身。2001年に5期メンバーとしてモーニング娘。に加入し、約10年間在籍した。第6代目リーダー、Hello! Projectのリーダーとして活動。2011年の卒業後は、演技の仕事に力を入れ、NHK大河ドラマ『平清盛』、映画では『シェアハウス』(11)や『恐竜を掘ろう』(13)に出演。舞台やミュージカルの出演機会も多く、ミュージカル『赤毛のアン』では昨年から2年連続で主役を演じている。

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