もともと、PMCではカメラ機能を強化したスマートフォンの開発を目指していた経緯があった。同時に、パナソニックのデジカメ部門でも、他社のAndroid搭載デジカメを踏まえた検討が行われていたという。
パナソニックのスマートフォン撤退により、PMC側の計画はパナソニックのデジカメ部門と共有され、「だいたい1年半前から」(パナソニック システムネットワークス ネクストモバイル商品開発推進室商品強化担当参事 井端勇介氏)から開発が始まったという。
パナソニックとしては、すでに撤退したコンシューマ向けスマートフォンビジネスに対して「復活はない」(パナソニック参与 AVCネットワークス社副社長兼イメージングネットワーク事業部長兼ネクストモバイル商品開発推進室 杉田卓也氏)と強調。今回の製品も、あくまで「デジタルカメラ」と強調。そのため、カメラ見本市のphotokinaにあわせて発表が行われた。
パナソニックが目指したのは、「撮影した写真をすぐにSNSなどクラウドに手軽に、高速に転送できる」という点。そのため、無線LANや3G通信ではなく、LTE通信の搭載にこだわったそうだ。通信部分のノウハウは、旧PMCがカバーし、撮った写真をすぐさま投稿する使い方を実現した。LTE通信が海外でも一般的になってきており、プリペイドSIMでもLTEが使える国が増えてきているなど、通信状況の発展と軌を一にしたタイミングもちょうど良かったと言えるだろう。
ターゲット層はカメラ愛好家で、写真の画質にこだわりつつ、SNSなどに投稿するために「カメラとスマートフォンを無線LANで接続して画像を転送している」といったユーザーだ。そうしたユーザーは、スマホカメラの画質に不満があり、コンパクトな高画質なサブカメラを持ち歩いていたが、そういったユーザーに対して、スマホライクな端末で高画質な写真が撮れ、LTEでいつでもすぐに画像が転送できる、という点をアピールしたい考え。
そのため、パナソニックのデジカメ部門は画質を追求。センサーサイズは1型と大型なものを採用。レンズも画質とサイズ、さらに昨今のユーザーニーズとのバランスがいい28mm F2.8単焦点レンズを採用。単焦点レンズにしたことで、光学設計的にも画質を追い込んだという。
画像処理エンジンには、DMC-GM1などと同世代のヴィーナスエンジンをハードウェアとして採用。Android側のQualcommのSnapdragonと2チップで端末を動かしている。Android部分の動作やカメラのUI(ユーザーインタフェース)部分などはSnapdragonが担当し、カメラの画像処理部分でヴィーナスエンジンが動作する形だが、本来はそれぞれスマホとデジカメを動かす心臓部のチップセットという「王様同士」(杉田氏)を並列で動作させ、それぞれ必要な動作を行うという処理に苦労したそうだ。
AndroidとSnapdragonの採用で、タッチパネルを使った操作や画像送りなど、高いレスポインスを実現。1型センサーやレンズ、ヴィーナスエンジンによる高い画質の実現を組み合わせて、全く新しい「デジタルカメラ」に仕上げた。
パナソニック製スマートフォンの復活ではない
UIはLUMIXシリーズを踏襲しているが、タッチパネルの操作はAndroid+Snapdragonで、通常のデジカメよりも快適になっている、としており、シャッターボタンやレンズ鏡筒のダイヤルには金属素材を用い、鏡筒のダイヤルの操作感にもこだわるなど、高品位なボディも追求した。
杉田氏も、「(パナソニックの)スマートフォンの復活ではなく、デジカメの進化」と強調。「LTE通信を内蔵したデジタルカメラ」を実現するためにAndroidを採用し、スマートフォン的なスタイルになった、と話す。
逆に言えば、スマートフォンとしての機能には制限が特になく、データ通信や音声通話は問題なく行える。デザインとしても4.7型フルHD液晶を搭載しており、スマートフォンの動作にも不満はないだろう。
とはいえデジカメであるため、販売コーナーは携帯売り場ではなくデジカメ売り場となり、携帯キャリア経由の販売は想定せず、SIMフリーとして販売する。ドイツを皮切りに欧州市場からスタートするのは、SIMフリー端末やプリペイドSIMが一般的に購入できる点を重視したそうだ。
そのため、MVNOが増えてSIMフリー端末も出回り始めたばかりの日本市場に対しては、現時点で「検討中」(井端氏)というにとどまっている。ただし、会場の端末は日本語フォントや技術基準適合証明(技適)の電子表示も備わっていて、日本市場への展開は期待したいところだ。
なお、CM1はスマートフォンとデジカメのリテラシーが高いユーザーをターゲットとしており、デジカメ売り場で購入して、自分でSIMを購入してLTE通信を設定できる、ということを前提としているようだ。