今回はちょっと分かりにくいキーノートだった。もちろん、Apple Watchがどんな製品なのかは理解できたが、Appleが何をイノベートしたのかが明確に伝わってこなかった。だからとって、Apple Watchが革新的な製品ではないのかというと、それを判断するにはしばらく時間がかかりそう。一方、iPhone 6/ 6 Plusは事前に漏れていた通りの発表になったが、周回遅れの大画面化への参入を感じさせない充実ぶりに感心した。
歴史の再現に挑んだApple
会場がフリントセンター……。それだけでAppleの歴史を知る人は同社が"革新的"な製品の発表に挑むと期待したはずだ。なんと言っても、初代MacintoshやiMacをお披露目した場所である。そこをあえて選んだのだから「今回はたまたま」なんて言いわけは通用しない。歴史の再現が期待されるのを重々承知で、フリントセンターという演出を採用したはずだ。つまり、それだけ発表するものに自信があったということである。
結果から言うと、今回はちょっと分かりにくいキーノートだった。もちろん、Apple Watchがどんな製品なのかは理解できた。だが、何をイノベートするのかが明確に伝わってこなかった。
イノベーションとは、ユニークな発想、画期的な技術、新しい仕組みの導入などをもって、世の中に大きな変革を起こすことを指す。それも、それ以前に戻れなくなってしまうような変化だ。よく誤解されているが、新しいテクノロジーを採用したり、新分野を開拓する製品を投入することが革新ではない。私たちの暮らしや社会に変革を起こせるかがポイントである。
Apple Watchによって、iPhoneユーザーの生活が便利になるのは想像できる。でも、それが不可逆なほどの変化に「なる!」と断言できる何かを今回のキーノートでは得られなかった。