――2013年は市川さんの芸能生活で特別な年になりましたね。
そうかもしれないですね。自分自身の中でやらなきゃいけないという思いはあったんですが…マネージャーが代わったこともいいきっかけになったのかもしれません。女性なので相談とかもしやすくなりました。でも、男性マネージャーさん、女性マネージャーさん、それぞれに良さはあると思います。ただ、男女の違いのようなものはやっぱりあります。おかげさまで、最近は自分がやりたい作品、一緒にお仕事をしたい監督もできるだけ伝えるようになりました。
――ひょっとしてブログを書いている「※マネージャーより。」というのは…?
そうです(笑)。
――初号試写が終わって、2人で泣いたことも書いてありました。マネージャーと役者が一緒に試写を観て、一緒に泣く。すてきだと思いました。
自分がやりたいと思ったり、挑戦したいと思っても、守りの部分を考えてくれるのが事務所の役割。それでも私の意見を尊重してくれるようになったのは私の中ですごく大きいことです。
――初号で流した涙。そして、舞台あいさつで主題歌「泣くかもしれない」の生歌を聴いて流した涙。それぞれ、どのような涙だったのでしょうか。
初号の時は…なんで泣いたのか分からないんですけど、ホッとしたというのが大きかったんじゃないかと思います。モニターが全くない現場が初めてだったんですけど、(鈴木)一博さんという素晴らしいカメラマンさんと監督の安藤さんにゆだねて。安藤さんもずっとカメラ横で芝居をみていて、現場にいる誰もがどんな映像になっているのか知らない状態だったので、最初は不安でした。でも、1日目からラブシーンを撮り終えて…もう飛び込もうと。そこで不安を感じていてもしょうがないので、監督を信じることに決めました。初号の涙は…その「信じてよかった」という思いもあって。振り返ってみても、自分では張り詰めているとは思ってないんですけど…きっと知らず知らずのうちにプレッシャーを感じていたんだと思います。
主題歌は衣装合わせの時に監督からいただいたんですが、すごくすてきな曲なんですよ。移動中とか集中したい時にいつも聴いていたんですよね。恵美子の気持ちが分からなくなった時にも聴いたり。そんなことを思い出して、泣いてしまいました(笑)。この映画は恵美子が出ないシーンがほとんどないので、撮影中もずっと休みはありません。だから、違うことを考える暇もなくて。そうやって過ごしたことも思い出したり。映画ではBGMが入っていないので、主題歌の存在が大きい作品だと感じます。
――作品に不可欠である激しい濡れ場。本当に2人の関係を覗いているような生々しさ、リアリティがこの作品の世界観に深みをもたせています。池松さんとは初共演ですが、初日からそういうシーンに挑むのは並大抵のことではありませんよね。
映画のポスターにもなっている、裸で寄り添うシーンが最初の撮影でした。池松さんと初めて会った日(笑)。もちろん、緊張もありましたし、私自身もそういうシーンは初めてだったので…でもこの前池松さんとも話していたんですけど、心が通っていない恵美子と洋の関係が良い意味で出ていたからよかったんじゃないかと。観た人からは冒頭からただならぬ雰囲気を感じたと言われます(笑)。 緊張はしましたけど、撮りはじめたら「飛び込んでいく」感じ。どんな映像になるのかわかっていなかったので、私も試写を観てすごく生々しいなと。自分でもあまり観たことないラブシーンだと感じました。
――転機となった今回の作品。今後はどのような女優人生を歩んでいきたいですか。
1つのイメージにとらわれたくないです。いろいろな役に挑戦していきたいですし、良い意味で毎回観る人を裏切っていきたい。
――それでは最後に。座右の銘としてブログにも度々「笑顔は幸せの結果ではなく幸せの原因」と書かれていますが、この言葉にはどのような思いが込められているのでしょうか。
友だちが手紙に書いてくれた言葉です。ずっと不機嫌な顔をしていると自然とそういう気持ちになりますし…笑っていると幸せな気持ちになりますよね(笑)。
■プロフィール
市川由衣
1986年2月10日生まれ。東京都出身。14歳の時に原宿でスカウトされ、2000年頃からグラビアアイドルとして活躍。2001年に『渋谷系女子プロレス』で女優デビューし、2003年には『呪怨』で映画初出演。その後、2006年の『サイレン ~FORBIDDEN SIREN~』で映画初主演、2010年の『桂ちづる診察日録』でドラマ初主演を飾った。現在、のりちゃん役として出演した映画 『TOKYO TRIBE』が公開中。NHK大河ドラマ『軍事官兵衛』の第37回(9月14日放送)と第38回(9月21日放送)に出演する。