――ベルリは、これまでのガンダムパイロットよりも屈託なく育っているようにも見えます。
物語の前半でベルリを明るくしたのは、きっとそういうものがありながらも、かなり裕福なシングルマザーのお母さんに育てられてきて、彼には社会的なキャリアも認められているという自信がある。だから、ものすごくあっけらかんと明るく振舞っているんだけれども、大前提があります。その大前提がある時、ポン! と開いちゃう。そのポン! と開いちゃう時に、ダメージというものを受け入れるような少年にしています。それは、半分は芸能的に楽しくみせるための背景に留めています。深刻な背景にしたくはなかったから抑えている部分はあるけれど、実を言うと今回の物語の全背景にピンポイントとに繋がる設定です。その辺は物語的に面白がって観ていただきたい、という意味でのリスクを背負わせています。
――直筆のメッセージでは「ベルリとアイーダの冒険はすごいぞ!」と謳っていましたが、これまでの「ガンダムシリーズ」からすれば"冒険"というワードは、なかなか連想しにくいです。
それが「ガンダムシリーズ」の欠点だったと思っています。ガンダムファンが、ある色彩に彩られたファン層という区切りがあってこれが嫌でした。つまり芸能的に享受されていないんです。例えば「元気」とか「熱血」というような言葉を貼り付けられないシリーズだったんじゃないのかと。それは、アニメとして見た時にあまりいいことだと思えなかった。それを意識したという言い方はできます。が、この言い方は全部嘘です(笑)。
――(笑)。
これに気がついたのは、『Gのレコンギスタ』の"G"は"元気のG"と思いついた3カ月ほど前です。それまでは気がつかなかった。つまり"G"を見ると当事者だから、"G"はガンダムなんですよ。その中で、今回の作品における、外向けのキャッチフレーズが欲しいって言われた時に「うるせえなてめえ!」と言いつつも、『Gのレコンギスタ』の"G"は"元気のG"なんだ! とこれを思いついた(笑)。タイトルにも全部被せられるし、まさに「ガンダムシリーズ」に一番欠けていたことで、もっともらしくニュータイプ論や宇宙世紀がどうのこうのって言ってることが、まさに大人の言葉遊びだったとわかったのです。原発だっていいんですよ、というのと同列かもしれない。それを本当に感じるようになって、改めて"G"は"元気のG"なんだと言った瞬間に、自分自身も完璧に洗脳された部分があって……洗脳じゃないな。もっといい言葉がある。浄化された部分があったんです。
――そこで脱ガンダムにはじめてたどり着いた。
そういうことです。つまりアニメというのは、もともとが"芸能"なんだよねって言ってきたたけど、本当に"芸能"に落としこめることに気がついた。だから、逆に自分の発想でありがたかったのは、自覚なしに先ほどお話したような、ベルリとアイーダをあのような設定を貼り付けることができたこと。これまでも芸能論には意識的だったけれど、自分自身を引っ張ることができなかったのは、ガンダムに潰されていたからです。だから『Gのレコンギスタ』は"元気のG"なんだと言えた瞬間に、それ以後のコンテも、演出も弾んできました。それまでは、なんとか子供に見てもらうために、ただ楽しく作っていこうと考えていました。しかし、この表現の仕方や考え方は、ロジックなんです。生理的なところまでいけない。その中で、"元気のG"か! だったらいい! だったらもうガンダム関係ない! ってところへ行くことができて、本当に脱ガンダムができたんです。
そうなるとキャラクターの動きが違ってきますね。大人の言葉遣い、上手に話ができるということが正しいのかという問題とも隣接してきます。自分自身がこういう体験をしているだけに、芸能が持っているのは「何? お前、人前でこうやって裸になるのが好きなの?」と聞いて「好きなの! で見てもらって喜ばれたらわたしもうそれだけで幸せなの!」、バカか! ということなんだけれども、その部分がひょっとしたら人の関係性の中で一番大事なことなのかもしれない、と理解できるようになった。
何度も嫌なこといいますよ? 原発関係者とか官僚の中に、人前で裸になって楽しいという感覚を持っている人が何人かいるわけです。顔見せが好きで。本来、政治家っていうのは大衆に向けて、もっとあけっぴろげに言葉を話せるような人でなければいけないんです。それでいて政策を行使することができなければならないんだけど、色々な事情がありまして……世の中って難しいんですよ! と半端な落とし前をつけてばかりいると、段々狂っていく。
――だから芸能が必要になってくる。
まさにアニメっていうのは、芸能で"元気"だけでやっていいんです。『G-レコ』で言えば、物語の世界観の中に、問題の種を全部撒いたつもりなので解説は一切しません。後はできる人が、考えて開発していけばいい。教えたものを教えられたようにやるのは、やはりレベルが低いと言えます。だから自己啓発も欲しいんだよと考えれば『G-レコ』の配列が間違いないと思っています。今はとにかく、どんなひどい作画であろうが、どんなに色がつかない作品であろうが、最後までオンエアしたいと思っています(笑)。
――いやいや高いです! 作画もクオリティが高いですよ!(サンライズ谷口氏)
それができそうもないって言えるくらい、ハードルが高い作品になっています。つまり元気風に見せる作り方って難しいんですよ。枚数制限がある中で『ワンピース』ぐらいバックがとれてれば、平気で止め画でやってもなんとかなるけど、こっちはそうはいかねえ! って(笑)、というのでちょっと地獄が起こっています。
『ガンダム G のレコンギスタ 特別先行版』
上映期間:2014年8月23日(土)~9月5日(金)※2週間限定
内容:TVシリーズ第1話から第3話をまとめた特別先行版のイベント上映
上映館:全国13館
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