――それだけ自信をもって送る本作。前作での反省を踏まえて挑んだそうですね。

もちろん今は今なりの反省点はたくさんあります。ですが、前回よりいいものはできたという自信はあります。具体的な作業の積み重ねなので、例えばアクションを1つとっても、この避け方がよくないとか。その動きがカッコよく見えるように勉強しようと思ったり。本当にちょっとした細かいことの積み重ね。一旦はやりきれた感はあります。またあるかどうか分かりませんが…たぶんないと思いますけど(笑)、やるとなったら、また反省点をクリアにしていくことからはじめたいと思います。

――先月のプレミア試写会で「ケガの恐怖が常にあった」とおっしゃっていました。相当過酷な現場だったんですね。

怪我で撮影が最後までできなくなってしまうという事が大げさじゃなくて、日常のように有り得るような現場でした。でも、そんなことを起こすわけにはいかないので、どうするかというと、とにかく集中してやるしかありません。そのモチベーションを半年間キープしてやり続けるのが一番しんどかったです。本当に辛かったし、きつかった。

でも、そういう時にたくさんの方が楽しみに待っていてくれることを思うと、やってやろうという気持ちになれました。きれいごとではなくて、撮影中かなり助けてもらいました。それに共演者の皆さんも頑張っていますからね、僕一人じゃありません。1つの作品にかける覚悟、本気具合はほかの作品よりも強い。そんな気持ちにさせてくれるのが大友組です。

――志々雄真実を演じた藤原竜也さんは、志々雄スーツを着ると不機嫌になったそうですが、その精神的な負荷が役作りにも生かされたと。対面してそのような印象は受けましたか。

クランクインの時からすごかったですね。もう何も言わなくてもラスボスだと(笑)。最強なんだという説得力がありました。僕と藤原さんが一緒のシーンはそんなにないんですが、物語上すごく大切なシーンになります。だから、同じ現場でもお互いいっぱいいっぱい過ぎて、談笑みたいなことはできなかったです。

ゆっくり話せたのは、終わってからの打ち上げ。あとは舞台あいさつなどで、やっとしゃべれています。『伝説の最期編』のクライマックスなんかは、「俺らの戦いはどうやって終わるべきか」を結構話していました。そのかいあって、完全に納得することができました。

――神木隆之介さん演じる瀬田宗次郎とも対峙しますね。

(前編での対決は)すべての床の中で最悪な足場でした(笑)。あのシーンは、僕もそうですし、隆もそうだと思うんですが、準備運動の戦い。それは『伝説の最期編』を観てもらえれば分かると思います。だから、『京都大火編』の新月村でのあの戦いは、全然すごいことをやっているつもりはありません。

――前作から2年を経ての本作。これだけの時間が空いたことによる苦労などはなかったのでしょうか。

体に染み付いてるみたいなんですよね。自転車に乗る感覚というか。クランクインの3カ月ぐらい前からアクション練習をやれていたので、そのあたりから徐々に。一番の役作りは、特別なことをするというよりも、その役のことを考えている時間。今回は準備期間もたくさんありましたし、自然と戻ることができました。

――そして前作では監督が「無理目」という言葉を口にされていたそうですね。本作ではいかがでしたか。

無理目(笑)。監督オリジナルの言葉です。今回は「超無理目」とおっしゃっていました(笑)。監督は大変だなと感じるのは、「超無理目」でアピールしてこれだけやれるからとお金を引っ張ってきたりしてると思うんですよ。そうやって周りを巻き込んでいく。僕は巻き込まれるというよりも、ひたすら剣心と向き合っていくだけです(笑)。

――「伝説の最期編」のラストは、まさに"超無理目"な激しいシーンに仕上がっているそうですね。

本当にすごかった。1週間ぐらいかけて、東宝のスタジオで撮りました。毎日壮絶だったんですが、最終日は朝から撮って、終わったのは翌日。剣心も志々雄も最後はヒゲが生えてました(笑)。あのセットでの1週間は、僕が25年生きて来た中でもかなり特別な時間でした。なんて言えばいいのか…。常にアドレナリンが出続けているような。本当にすごかったですよ。クランクアップではなかったんですが、そのシーンが終わって、はじめて監督と握手をして。それは、自分が設定したハードルを1つ超えられた瞬間でした。

■プロフィール
佐藤健
1989年3月21日生まれ。埼玉県出身。2007年に『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)で初主演を飾る。『ROOKIES ルーキーズ』(TBS系08年)で注目を集め、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)の岡田以蔵役で時代劇に初挑戦。昨年は、『リアル~完全なる首長竜の日~』や『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でなどの主演作が続き、2015年公開予定の『バクマン。』では、神木隆之介とダブル主演を務める。

(C)和月伸宏/集英社 (C)2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会