2014年度、前年比1.5倍のコール数にもかかわらず、対応率88%以上を達成した要因としては、昨年実施したカスタマーセンター増床による効果が大きいが、岡本社長は「席を増やせば解決できる問題ではない」と指摘する。実際同社では、カスタマーセンターの増強に加え、3つの戦略を実施したという。
3つの戦略とは、「人を育てて、生産性の向上とスキル蓄積を図る」、「計画に基づき、PDCAサイクルを回す」、「コールを能動的に制御する」だ。
スキル蓄積では、契約社員から正社員への登用制度である「正社員業務職制度」を創設し、離職率を下げ、スキルを持ったオペレータの安定的な確保を図っている。同社では毎年40名を正社員に登用。これにより、2012年には11.2%だった正社員率が、2014年10月には34.4%にアップしている。
人材育成について、札幌カスタマーセンター長 西部淳子氏は、「入念な研修とフォローアップのほか、経験の浅いスタッフと長いスタッフの組み合わせるなどにより、処理効率をアップさせています」と語る。
また、さまざまな行事を企画し、社員同士のつながりを深めているほか、社員総会やカスタマー総会を通して、ミッションやビジョンの共有を図っている。
そしてコールの能動的に制御では、問い合わせ自体を減らす工夫として、わかりやすいシステムにするため顧客の問い合わせ履歴を分析し、製品の仕様やサポートコンテンツに反映している。具体的には、年末調整ナビ機能を搭載し、何をどういう順番で行うのかを理解しやすくしたほか、冊子の作成や弥生チャンネルでの動画配信などを行っている。
さらに、アドバイザリーデスクを設け、弥生側から顧客に電話し、法改正や製品導入時での悩みがないかを問い合わせている。これは、問題が起こる前に課題を解決し、繁忙期である12月~3月の負荷を分散しようとする取り組みだ。また、弥生顧客以外にも、ソーシャルメディア上で疑問や不安に回答し、問題解決をサポートしている。
満足度アップには、問い合わせに対する問題の切り分けと的確な回答が不可欠だが、西部氏は、それには、相手の話を最後までしっかり聞くこと、「問い合わせしたい内容はこれですね」という確認が重要だと指摘した。
また、オペレータが回答を丸暗記するのではなく、その問題の裏にある原理原則や各要素のつながりを理解していることが重要で、この部分の教育に力を入れているという。
サポートツール面では、CTI(Computer Telephony Integration)を導入し、着信時に顧客情報をオペレータ画面に表示しているほか、シンクライアントを組み合わせた2画面構成により、作業効率をアップさせ、対応時間短縮を図っている。さらに、顧客のPCを遠隔操作で共有しながらサポートする「画面共有サポート」の仕組みを導入しているという。
後半では、なぜこのように弥生はサポートを充実させているのか、事業コンシェルジュ化が目指す本質とは何なのかを岡本社長のインタビューを通してレポートする。