GPUの計算能力の増大で映画作成現場での作業効率をアップ

続いてグプテ氏は新Quadroの先行事例をいくつか紹介した。まず米国で2014年10月に公開される映画「Gone Girl」だ。この映画では6Kで撮影し、これを4Kにダウンコンバートしている。ここでQuado K5200を提供したところ、6Kでの再生がリアルタイムに行えポストプロダクション(映画撮影後の後工程)に大きく貢献したという。

映画「Gone Girl」のポストエンジニアのコメント。この映画は全編6K撮影されたもので、そのポストプロダクションにK5200は欠かせなかったとコメントしている

また、米ポストプロダクションスタジオFramestoreは映画「ゼロ・グラビティ」のVFXを担当しているが、ここでもQuado K2200/Quado K5200を提供したところ、3Dテクスチャペイントを行うMARIといったアプリケーションで、処理速度の圧倒的な向上が見られたとコメントしている。

ポストプロダクションスタジオのFramestoneでも新製品を先行評価しており、同社CTOがQuadroが「最良の武器」であるとコメントしている

ここでQuadro K5200を使ったデモが2つ行われた。デジタルシネマカメラのパイオニア製品としてREDがあるが、このカメラのRAWデータである「R3Dファイル」の再生にはDebayerと呼ばれる処理が必要だ。

このため、従来のAdobe Premiere Proでリアルタイム再生するためにはRED ROCKETという専用ボードが必要だったが、Adobe Premiere Pro CC 2014ではNVIDIA CUDA対応ビデオボードで高速処理が可能になった。デモでは4K素材をAdobe Premiere Pro CCで再生し、さらにリアルタイムで部分的なモザイク処理を施していた。

Adobe Premiere Pro CCによるRED 4K RAWデータの再生例。右の黒い鳥にモザイクがかかっているが、これは後処理で実現されており、設定を変えてモザイクパターンを変化させていた

Adobe Illustratorもユーザー数の多いアプリケーションであるが、今まではGPUアクセラレーションの恩恵を受けることができなかった。しかし、新バージョンでGPUプレビューが用意されたので、複雑なベクターデータのズーム、パンがスムーズに行えるようになり、作業効率が向上する。

Adobe Illustratorに追加されたGPUプレビューのデモ。メニューからON/OFFするだけでOpenGLのGPUアクセラレーションが入るようになり、パンやスクラブズームが非常に滑らかに動く

また、かなり拡大してもラインがスムーズに表示されており、プレビューといえど表示品質が高いことがわかる

データセンター内のアプライアンスを使いレンダリング速度をアップ

インダストリアルデザインの作業現場では、よりリアリティの高い表示の要求がある。一方でデザイナーのワークステーションすべてに高性能ビデオカードを複数枚搭載するのはコスト的なハードルが高い。

すべてのデザイナーが常時高い能力を要求している状態でない場合、必要に応じて性能アップを図るというのが現実的な回答だろう。そこでNVIDIAはAutodesk MayaのレイトレーシングプラグインIRAYにリモートレンダリングエンジンの機能を追加し、Autodeskの設定を変更するだけでデータセンター内のVCAアプライアンスの能力が得られるようにした。

IRAYはレイトレーシング演算であり膨大な計算能力を必要とするが、これを普段はワークステーション単体で処理し、必要に応じてデータセンターのアプライアンスを利用することで対処する。

インダストリアルデザインの現場では現物のない製品を実環境に置いたかのようなレンダリングが求められているというが、これには多くの処理能力を必要とする

これに対するNVIDIAの回答が、Quadroを使用したワークステーションと必要に応じたレンダリングパワーを遠隔地から得られるNVIDIA VCAアプライアンスだ

これもライブデモが行われた。データ量が約800MBあるaudiのデータを使用し、これをQuadro K5200を二枚使用したワークステーション上でレンダリングした。その後、Autodeskの設定を変更して、サンタクララにあるVCAアプライアンスを9ノード使用してレンダリングを行った。

VCAにはQuadro K6000相当のGPUが8台搭載されており、これを9ノード使用したのでGPU72台を占有したと考えるとわかりやすいだろう。一回だけデータをアップロードする時間が必要になるが、その後のレンダリング速度は圧倒的な違いを見せていた。自動車メーカーの中にはVCAをすでに数百台導入している企業もあるということで、よりリアリティのある画像をより迅速なレンダリングするために使われているという。

IRAYのデモ。ここではQuadro K5200×2枚というかなり高速なワークステーション環境で動作させているが、それでもレイトレーシングにはそれなりの時間がかかる

動きがないのでわかりにくいが、VCAを複数使うことでより高速なレイトレーシングレンダリングが行えるという参考動画。左上がワークステーション単体で、右上、左下、右下とVCAを複数台動作させることでより高速なレンダリングを可能とする

デモ環境のQuadro K5200×2枚の構成。今回価格に関しての直接の言及がなかったが、「前世代と同価格」ということなので、Quadro K5200は23万前後というところだろう(円安でもう少し値上がりするかもしれない)

ここでの新製品の先行導入例として、ドイツベースの車デザイン会社であるモーターシティ・ヨーロッパが紹介された。この会社ではQuadro K5200を2枚使用したシステムを使用し、aliasとbankspeedというアプリケーションがスピードアップしただけでなく、Quadro K5200は8GBのメモリを搭載しているので、3D CADソフトウェアであるダッソーシステムのCATIAのデータを簡素化することなくインポート可能となり、設計データの意図をそのまま表示できることを評価していたという。

モーターシティ・ヨーロッパのチーフデザイナーはQuadro K5200によってより理想に近づいたとコメントしている

実績あるプロフェッショナル向け製品が2倍のメモリと高い性能を同価格で提供としてまとめた