Bluetooth Low Energy、普及への第二波がやってきた
Bluetooth SIGは8月22日に都内で記者会見を開き、Bluetoothの現状と将来予測を説明した。まず、Bluetooth SIGのエレット・クローター(Errett Kroeter)氏が登壇し、Bluetooth SIGのこれまでの歩み、直近の注目分野と今後数年間の予測を紹介。
Bluetooth SIGのメンバーは世界に2.3万社以上となり、その3分の1がAPAC(Asia-Pacific、アジア太平洋地域)に属するという。この地域のメンバー数は過去1年で30%の伸びを見せている(世界平均は15%)。ちなみに日本では、中国に次ぐ1,127社がBluetooth SIGに加盟しているそうだ。
Bluetooth SIG Director,Global Industry & Brand Marketing のエレット・クローター(Errett Kroeter)氏 |
APACは他の地域と比較して、過去1年間のメンバー増加が多い(30%増)。日本からも多くの企業が加盟している |
同時に、Bluetoothを利用した製品数、製品出荷数も順調に伸びを示している。2014年で、総出荷数が30億台を突破。2018年には46億台に達すると予想し、ワイヤレス機器の世界でBluetoothが歴史的にも最大の成長を見せている。
Bluetoothはかつて、「モバイル機器にヘッドセットをつなぐ」ところから導入が進んだ。2010年からは、より消費電力を減らしたBluetooth Low Energy(BLE)が登場し、これがBluetooth普及の第二波になったという。従来も、低消費電力の仕様によって、待機状態で数カ月は利用できる機器もあったが、BLEのおかげで数年に伸びた。ただし、従来のBluetoothとBLEには互換性がない。
今後5年間のBluetooth製品数の出荷台数予測。順調に伸び続けると予測されている |
「第二の波」となったBluetooth Smartは、低消費電力で多くのアプリケーションが登場している。Bluetooth Smartとは、BLE対応の機器に与えられるブランド名だ |
2018年にはほぼすべての携帯電話・スマートフォンがBluetoothをサポート
2018年までに96%の電話がBluetooth Smart Readyになると予測。ほぼすべての携帯電話やスマートフォンが、Bluetoothデバイスを接続するホスト側(ハブ)になれる前提で開発を進められるとした |
Bluetoothの普及が進んだ理由の1つとして、OSが標準でBluetoothをサポートしたことが挙げられる。開発者は標準的なAPIを使って最新技術を使うことができ、今まで考えられなかったような製品が生まれてきた原動力になっているという。
2018年になると、すべての携帯電話・スマートフォンの実に96%が、Bluetooth Smart Readyとなると予測した。Bluetooth Smart Readyはロゴプログラムの1つだ(詳細な条件などは割愛する)。開発者は、「すべての携帯電話でBluetoothが利用できる」という前提で製品開発を行うことができ、市場の広さを強調していた。
ここで、日本市場における2014年第1四半期のスマートフォンシェアが紹介された。日本では、51.6%がiOS、47%がAndroid、4%がWindows Phoneで、iOSのシェアは他国よりも大きいという。iOS 4以降でBLEをネイティブサポートしており、この点では他の地域よりも市場的に有利だ。
一方のAndroidは、Android 4.3以降でBLEをサポート、そして次世代のAndroid LでBluetooth 4.1のネイティブサポートがすでに発表されている。コンシューマーにとって、Bluetoothを使いやすい環境が整いつつあるとした。
Android OSでは、Bluetoothのクライアントとサーバーの両方をサポートし、開発者に高い柔軟性を提供している。今後は、テレビにBluetoothが搭載されることによって、テレビがBluetoothハブ(ホスト側)として使われる。次世代のAndroid Lは、携帯電話でもテレビでも利用でき(スクリーンサイズに関わらず)、スマートホームの管理にテレビが活用される日も遠くなさそうだ。
BluetoothのハブはAndroid Lでさらに広がる。特にテレビに組み込まれることで、スマートホームの入口として期待が高まる |
ハブが増えることが、Bluetooth Smart機器を増やす原動力 |
ビーコンやヘルスケアがBluetoothのけん引役に
BLEの利用例としては、最近のけん引役となっているビーコンを紹介した。ビーコン端末を施設内に置き、スマートフォン側のアプリケーションと連動。屋内ナビゲーションや、小売市場でのクーポン発行、展示物の自動案内として応用が進んでいる。
一例として、本日(2014年8月21日)から開催されている「新宿クリエイターズ・フェスタ2014」を挙げた。このイベントは東京都・新宿駅周辺の各所で行われており、iPhone専用の対応アプリ「mate」をインストールすると、専用ビーコンを持つオーナーから招待状が届いたり、地図で作品へのナビゲートができるものだ。ビーコンとの距離でコンテキストベースの情報提供が行われ、低コストで実現できるほか、アプリ作成も技術的なハードルが高くないのがメリットだ。
Bluetooth SIGでは、2018年までに家庭用電化製品やビーコン、スマートホーム、ヘルス&ウェルネスといった分野で、Bluetoothの利用が大きく伸びると予想している。そして開発者のイマジネーションを実現しやすくするため、テクノロジーの標準化をメンバー企業とともに整えるという。
その一環として、Bluetoothブレイクスルー・アワードを実施。これはベストプロダクト、ベストアプリケーション、ベストプロトタイプの3分野で、優れた作品を表彰するものだ。来年(2015年)からは学生主導のプロジェクト分野を追加し、International CES(Consumer Electronics Show)でファイナリストを発表したのち、Mobile World Congressで部門賞と最優秀作品を発表するという。