"居酒屋併設"のホテルでは朝食を定食で
そんな古川から国道4号線を南下すると、独特の外観で目立つ「バリュー・ザ・ホテル三本木」がある。1泊朝食付き・滞在型をうたう宮城県内で5店舗展開される地元密着系ビジネスホテルチェーンだ。その中でも三本木店の特徴は、同チェーン最大の全513室にしてなんと2階建てなのである。広大なパーキングも有しドライバーやツーリングのゲストにはうれしいホテルだ。
シンプルな造りとシステムでシングルルームを大量に設け、作業員の方の宿泊も多い東北復興支援ホテルの役割も担っている様子。さらにこちらの店舗、なんと居酒屋が併設されているのだ。今やコンビニ併設はビジネスホテルのブームだが"居酒屋併設"である。
ホテル内で直結しており店舗内は広々としたスペース。ホテル宿泊者の夕食や無料朝食を提供するスペースと一般客の居酒屋スペースが分かれている。ロードサイドホテルで周囲にはほとんど飲食店はないので、宿泊者の居酒屋利用はかなり高いようだ。
朝食はこの居酒屋で供されるが、充実した厨房スペースも有するだけに充実した無料朝食に驚かされる。筆者が出向いた時には2種類の定食が用意されていた。ビュッフェではなく「定食」のスタイルである。定食と比べ、全て取り放題のビュッフェの方が満足度が高いと思われがちだが、こちらはご飯や味噌汁をはじめ、小鉢、サラダ、生卵、納豆などはセルフサービスで取り放題というハーフビュッフェ。しかし、ながらその充実した内容に大満足である。
何よりスタッフのおばちゃんがフレンドリーで心和む。そんなおばちゃんからまず定食のメインメニューが出された後、そのまま長いレーンに小鉢などが余裕をもって配されている。狭い間隔で料理が置かれていると「詰まってしまう」が、こちらのように間隔に余裕があるとストレスフリーでピックアップでき、ビュッフェの要ともいえる導線にも優れているといえそうだ。
そしてこれまでのホテル朝食では見たことのない、"朝5時からの朝食"にも驚きである。ボリュームたっぷりの宿泊者用の夕食も同じ場所で1,030円(税込)にて提供されており、筆者も出向いたところ真っ黒に日焼けした多くの男性が夕食を食べていた。話を聞くと復興作業員とのこと。彼らにとってこの「居酒屋スペース」は、英気を養う場所であるようだ。
※記事中の価格・情報は2014年8月取材時のもの
筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)
ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが選ぶ絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」