一方、日系の航空会社が加盟していない航空アライアンス「スカイチーム」系の大手航空会社、例えばデルタ航空などが興味を持つ可能性も。しかし、外資規制のためスカイマークを完全子会社化することはできないし、国内にそれらしきパートナーも見当たらず、ANAやJALとの競争を振り広げるというのは非現実的な話だ。
LCCによる買収が実現すればメリット大
その国内にパートナーを持つ外資系航空会社といえば、思い浮かぶのは低コスト航空会社(LCC)のエアアジアだ。同社は楽天やノエビアなどをパートナーに迎え、2015年を目処にエアアジア・ジャパン便を国内に就航させると発表している。ただ、いまだ具体的な運航路線は明かされておらず、ジェットスター、ピーチ、バニラエア、春秋航空日本と、すでに4社ものLCCが飛び交う国内に新規就航して需要があるのかと、実現化を危ぶむ声もある。
しかし、スカイマークを傘下に収めるとなると話はまったく違ってくる。他のLCCは成田や関空をベースにしているのに対し、都心から近い羽田を拠点にできるからだ。羽田発着便を運航するには成田や関空よりもコスト(経費)がかかるため、成田や関空発着便ほど安くはできないかもしれないが、それでもLCCならではの思い切った運賃が期待できる。
また、エアアジアは12年8月~13年秋までANAとパートナーを組んで「旧エアアジア・ジャパン」を運航していたわけだが、運航方針の違いが原因でANAとはケンカ別れしたと言われる。そのANAとスカイマークを傘下に収めた"新生エアアジア・ジャパン連合"が国内線を舞台にした遺恨劇を繰り広げる様にも興味をそそられる。規制当局の国土交通省が難色を示しているとされるが、羽田発着のLCCが実現すれば利用者にとって大きなメリットがあるのは間違いないだろう。
もちろんエアアジアでなく、ジェットスターなどほかのLCCでも話は同じだ。もっとも、ここへ来て当のスカイマークは成田発着便をはじめとする不採算路線を見直し、早急な経営改善策を検討しているようだ。
スカイマークはそうした効率化を重ねながら生き残ってきた航空会社であり、今回も改善策が功を奏して身売りするような事態にはならないかもしれない。とは言え、ここで述べた仮説を今後のスカイマークの動きを見る際の参考にしていただければ幸いだ。
筆者プロフィール : 緒方信一郎
航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。