さらに決め手となったのが600MHz帯の周波数オークションでSprintとT-Mobileの2社で共同申請を計画した件で、先週になりFCCから2社によるオークション参入を禁止する旨の警告を受けたことだ。
つまり、少しでも2社が近づくような提案は政府が介入してでも阻止するとの強い意志を示されたといえる。SprintによるT-Mobile買収の観測が出始めたのが昨年2013年末なので、およそ半年が経過してもFCC側のスタンスに変化はなかったことになる。Reutersが伝えたあるソフトバンクのコメントを借りれば、「これほど買収に対する抵抗が強いとは考えていなかった」とあるように、完全に仕切り直しモードに入った印象がある。
FCCが抵抗を示す理由
気になるのはなぜ、FCCがここまで全米第3位の携帯キャリアが第4位の携帯キャリアと合併して大手2社に対抗していくことに抵抗感を見せるのかということだが、まず「(合併により)大手の選択肢が減って消費者の利益を損なう可能性があること」が理由で、次に「特にローエンドの市場での選択肢の減少」を挙げている。
筆者の推測だが、特に2番目の理由が大きく、「米国政府は別に第3のAT&TやVerizon Wirelessがほしいわけではなく、SprintやT-Mobileには別の役割を果たしてほしい」と考えている節があることだ。
孫氏の考えでは、おそらくT-Mobileを吸収してSprintをAT&TやVerizon Wirelessに匹敵する規模の顧客ベースを持つ巨大キャリアへと成長させ、スケールメリットで勝負していこうとしていたのだろう。
FCCのいうローエンドの市場、つまり低所得者層向けのサービスは顧客ベースこそ多いものの、全体にARPUが低く利益率もそれほど高くない。市場としてはポストペイドが中心でARPUも高く、さらに携帯キャリア事業で一番の魅力である「インフラ事業として毎月高い収益が一定して得られる」というメリットを持つ大手2社と同じポジションのほうが、事業としてのうまみも大きいだろう。いくら政府の希望であっても、こうした「大手2社からこぼれた領域をカバーしろ」というのは孫氏にとってはビジネスとして面白味はあまりないはずだ。