ライフスタイルの近いコミュニティが連帯
ーー次は第6章の尾原和啓さんのところです。ここで伺いたいのが、ライフスタイルのコミュニティや、そのとき「シェア」という概念がどう働いてくるかという話です。例えば、ある時代には地域コミュニティだったこともあると思うんですが、これから先のコミュニティ自体はどこから派生すると考えられますか?
「もちろん、地域コミュニティとは相対的に弱くなっていくと。これはもう間違いない。地域コミュニティからテーマコミュニティへという大きな流れ自体は不可避ですよね。でもテーマコミュニティというのは地域コミュニティに比べて絆が弱い。じゃあどうするか、どんなコミュニティならありえるかというと、ウェブサービスを介して生活の要求から連帯していくという可能性が高いということを話しているんですよね。たとえば、週に一回だけ車がいる、とか。週に一回車が必要な人というのはかなりライフスタイルが似ているはずです。そういったことを基準に人々が連帯していく可能性はないか。
もっと言ってしまうと、僕と尾原さんがこの話しているのは吉田浩一郎さんとの絡みがあって。吉田さんの構想を実現していくことを考えたときに、クラウドソーシングを通じて労働組合や共済をつくることができないかと考えているのは、今クラウドソーシングを使っている人たちの多くが戦後的な社会保障からもれてしまっている人だからなんです。社会保障という生活の要求に連帯の可能性があるように考えている。地域コミュニティというのはまさに地理を根拠に連帯するわけですよね。テーマコミュニティというのは趣味や思想ですよ。
でも、その中間として生活の要求と言うのがありえるんじゃないかと考えているんですよね。特定の地域や職業には縛られないのだけど、非常にライフスタイルが似ていて、抱えている政治的な要求や課題が似ている人たちが連帯していくべきだと思うんですね。具体的に言うと、僕は保険・子育て支援だと思います」
ーーそろそろまとめに入りたいと思うんですけど、先日の「Hikarie+PLANETS」含め『PLANETS vol.8』以降に「新しいホワイトカラー」や「衣食住」など生活に関わる部分への関心が強くなられているのかなと思うんですね。それまでに比べると。その理由と今後の展開、今後もそうした分野を進めていかれるのかといった部分を伺えればと思います。
「今後は進めていきたいなと思っていて、言ってしまうと僕は新しい日本人に対して"こんな未来が面白い"とか"こんな未来が住みよいんじゃないか"というようなイメージを提案できるようなメディアを作っていきたい、メディアを作り言説を担っていきたいと思っているんですよね。言ってしまうとちょっと理想とかね、何かこうポジティブな未来像を示すような仕事をやっていきたいと思っていて。そのときに中心にならなきゃいけないのは生活のビジョンなのですよね。それが一番、今ものすごく変革期にあって、メディアが拾い上げてないだけで、そこにニーズがあると感じるからですね。読者がそこを求めているという核心があるんですよ。なので、そういったことをやっていきたいなと思いますね」
『静かなる革命へのブループリント この国の未来をつくる7つの対話』
宇野常寛編著、河出書房新社、1,500円(税別)。
「彼らはすでに世界を変えているーー政治、産業、都市、家族、働き方、科学、そして芸術……行きづまりを見せるこの世界に突破口を開く7人のイノベーターと、若手のオピニオンリーダーによる対話集!」詳細は特設サイトへ。