どんどん険しくなっていく道を慎重に進み、八合目・本八合目・本八合五勺目・九合目と登っていった。ここでは八合目の山小屋「太子館」から、現在は閉鎖されている九合目の「迎久須志神社」までの計測結果を一気に紹介する。
七合目の計測結果 (拡大画像はこちら) |
八~九合目の計測結果 (拡大画像はこちら) |
全体的にはNTTドコモが安定して高速通信を維持している印象だ。とくに九合目の計測ではソフトバンクモバイルは計測不可、KDDI(au)もiPhoneの下り速度が17Mbpsという状況のなか、NTTドコモはandroidスマホ・iPhoneともにその2倍以上の速度を叩き出したという点が目立った。
九合目を越え鳥居をくぐると、やっと頂上に到達。頂上でNTTドコモのLTE基地局設置の担当者である波多野幸泰氏に話を伺うことができた(事前にお時間頂きインタビューさせて頂いた)。波多野氏の話によると頂上に設置した基地局のカバー範囲は、「お鉢巡り」をはじめとする山頂をメインにしたものだという。登山道は街中にある基地局から富士山に向けて電波を飛ばしているが、山頂にはさすがに電波が届かないので、山頂にて設置した基地局で電波を増幅して800MHz帯でのエリア化を実現しているとのこと。
「山頂はMOVAの時代からエリア化しており、FOMAの実績とともにLTEに引き継いで毎年少しずつ改善を重ねている。昨年、登山道のLTEは800M/2GHzの周波数を使って展開したが、現在1.5・1.7GHzのエリア化も進み、今夏の山開き中にはクアッドバンド化する予定。電波を飛ばしたら調査して悪かったところを見つけたら来年度対策を立てるなどして徐々に通信環境の改善を図っている。電波を飛ばしたら終わり、というわけではなく調査によって富士山に効率よく電波を届けるよう改善し、通信速度も上げていきたい。」という通信環境に対する姿勢も話してくれた。
さらに富士山以外の山での通信環境について質問してみたところ、「FOMAの時代から北アルプスをはじめとする、さまざまな山でも通信できるようにエリア化はしている。百名山すべてではないかもしれないが、だいたいの山では通信できると思っている。FOMAの設備をLTE化することは可能なので富士山だけではなく、もっといろんな山でLTEを使えるようにしたい。」と回答頂いた。
インタビューと休憩を終えた後、頂上で計測を行うとNTTドコモが首位に。先ほどのインタビュー内容を裏打ちするような結果だ。
頂上の計測結果 (拡大画像はこちら) |
なお今回はスケジュールの関係上、山小屋には泊まらず、そのまま下山することに。下山には一番楽に降りられる「須走ルート」の下山専用ルートを使用し、須走口の八・七・五合目のポイントで計測した。
その結果は以下の表のようになった。吉田口の計測した結果と比べると、須走口の結果は五合目でKDDI(au)が良い結果を残したが、それ以外は全体的に速度が低下している印象だ。樹林帯が七合目あたりまであるという環境や地形などが関係しているのかもしれない。なお、山頂から本八合目までの道は吉田ルートと同じなので、その間の計測は割愛している。
八~五合目の計測結果 (拡大画像はこちら) |
すべての計測結果が出そろった時間は22時を超え、麓のホテルに着いたのはほぼ24時。4時から行動を開始したこともあり、もうクタクタだ。
高尾山くらいしか登山経験のない筆者は無事登頂できるか不安だったが、高山病の予防ポイントを事前にチェックしていたことと、山登り経験豊富な同行者に助けられたこともあり、何とか取材を終えることができた。後日発生した痛みも日焼けと靴擦れ、太ももの筋肉痛程度で済んだ。
今回の速度計測では、上りも下りも5合目以外は(6合目は僅差)NTTドコモが優勢。複数の周波数帯を同時に利用するデータ通信技術「キャリアアグリゲーション」を2014年度内に導入予定のNTTドコモだが、すでに同技術を投入しているKDDI(au)を上回る結果となった。前述のインタビューにもあったように、NTTドコモは登山道のクアッドバンド化を進めているため、読者の方が登山する頃にはこの結果よりもさらに通信速度が上がっているかもしれない。今年、富士山に登ろうと思っている人は、ぜひ今回の結果を参考してもらいたい。
計測スポットすべての結果一覧 (拡大画像はこちら) |
(執筆:ライターズハイ 藤縄優佑)