紙粘土で原型をつくった

Ringを発想したとき、吉田氏はまず新宿の「世界堂」に行き300円の紙粘土を買い、喫茶店でプロトタイプの原型をつくったという。その際、チームのメンバーの反応は良くなかったらしい。しかし吉田氏は「来年、Ring型のデバイスを作る」と宣言。それがプロジェクトの始まりだったと秘話を明かした。

吉田氏が作成した、紙粘土のRing

その後、「たぶんできるだろう」という予感だけで行動を起こした。まずは3Dプリンタで制作したサンプルを持って、日本中の技術者に意見を聞きに行った。「はじめは、10年後でも無理と言われる。でも話をしているうちに、何のセンサーを入れればできるかも知れない、と先方の反応が変わってくる」と吉田氏。やがてiPhone、Androidを使って負荷を分散させれば、指輪のように小型化できるという発想に行き着いた。

3Dプリンタで原型を制作した(写真左)。いかに小型化するかが課題だった

吉田氏は「既存の技術を組み合わせて製品を作る、ということは"つまらなすぎて"自分にはできない。技術を無視して、こういうものを作りたい、と考えるタイプ。そういう考え方がないと、本当に人をワクワクさせることはできないと思う。だから、紙粘土でプロトタイプを作ったのは正解だった」と話す。「魔法を具現化」させるには固定概念に縛られない発想の柔軟さが必要で、「理想を語り続けることで、初めてアイデアが産まれる」と持論を説明した。

理想を語り続けることで、初めてアイデアが産まれる