なぜ「SIMロック解除義務化」なのか?
現在の日本は、携帯大手3社による市場の寡占状態にある。この状況に「SIMロック解除義務化」を持ち込んで各社にさらなる競争を促し、さらにMVNOといった自社では直接回線を持たない携帯事業者の新規参入しやすい環境を作り出すのが総務省の狙いだとみられる。SIMロック解除によりユーザーのキャリア間での乗り換えが容易になり、流動性が高まることで、競争促進による料金の値下げや利便性が高まる効果が期待できるというわけだ。
海外をみれば、欧州をはじめ販売される端末にSIMロックがかかってないケースがあったり(一定期間後の解除義務が存在するケースも)、あるいは米国のようにSIMロックはかかっているものの一定条件(2年縛りによる端末の分割支払いを完済しているなど)を満たすことで解除コードが発行されるケースなど、地域ごとの差異こそあるもののSIMロックに対して比較的柔軟に対処している印象がある。おそらくは、総務省はこうした事例を根拠に議論を進めていきたい考えなのだろう。
ただし、SIMロック解除義務化だけでは携帯キャリアが契約期間の"縛り"をさらに長くしたり、家族間での回線共有や固定回線とのセットプランなど、さらに囲い込みを強化する懸念もある。ここにクーリングオフ制度を持ち込むことで、「回線品質などユーザーの意に沿わない内容であれば、一定期間内を条件にサービスを解除できる」ことでユーザー側の利便性をある程度確保できる。
SIMロックフリー端末のハードル
ユーザーが携帯電話を利用するときの最初のハードルは「端末の入手」だ。現在、日本で一般的なスマートフォンの価格は安くても5~6万円ほどで、携帯キャリアによっては10万円近いものまで存在する。これをそのまま購入して毎月何千円もの利用料を携帯キャリアに払い続ける……というのは利用者にとって大きな負担だ。
そこで最初のハードルである「端末購入」のハードルを下げる代わりに、月々の料金で少しずつ回収していく……というのが世界の携帯キャリアで編み出されたビジネスモデルだ。ただし、これは長期契約が前提のビジネスモデルであり、短期契約や月ごとの契約解除が可能な「プリペイド携帯」ではその限りではない。
この場合、端末料金の分割回収はできないため、最初のハードルである「端末価格」は高騰することになる。日本では最新のiPhoneであっても「実質0円」で端末を購入可能なのに対し、海外でプリペイド端末を運用しようと思ったら旧式のスマートフォンでも本体価格で安くて1~2万円近くかかってしまうのも、こうした理由による。