神奈川県・みなとみらいのシェアスペース「BUKATSUDO」が、6月25日にプレオープンを迎えた。コンセプトは「大人の部活が生まれる、これからの街のシェアスペース」。「大人の部活って実際何なの?」 そんな疑問を解決すべく、6月某日のキックオフイベントにて、「BUKATSUDO」に手ぶらで乗り込んでみた。

BUSHITSU

「大人の部活」は10月から

皆さんには部活動の経験がおありだろうか。同じ目的のもとに集まり、時に楽しく、時に真剣に、ひとつの活動に打ち込む仲間。用もないのに長居してしまう部室……。

そんな経験がある方も、ない方も、大人になった今「部活」に打ち込める空間がある。現在、プレオープン期間として営業中の「BUKATSUDO」である。

「BUKATSUDO」とは、簡単に言えば、時間貸しから月貸しまで、さまざまな種類の空間をレンタル制で提供している施設である。セカンドオフィスとして使える「WORK LOUNGE」や、ワークショップなど多様な使い方ができる「RENTAL SPACE」などを用意している。

施設の詳細については、前回の記事を参照していただきたい。

さて、利用できるのは10月のグランドオープン後となるが、注目すべきは「BUSHITSU」の存在である。

「BUSHITSU」は月貸しのスペースで、まさに学生の部活動の「部室」のごとく、それぞれの「BUSHITSU」利用メンバーが自由に活動拠点として使うことができるのだ。

イベント当日には、「BUSHITSU」を使った「大人の部活」のモデルケースとして、実際に地域で活動しているNPO法人や、趣味の集まり、あるいは同業者の集まりなど、さまざまな団体が1日限定の「1日部活」を「BUSHITSU」に構えていた。

いろんな人でにぎわっていた

自転車でコーヒー豆をひく

横浜自転車部

まず筆者がのぞいてみたのは、「Y-BLIC 横浜自転車生活向上委員会」という団体の部活「横浜自転車部」。「横浜を自転車で楽しめる街に」という想いから、建築家やメッセンジャー(自転車便)などさまざまな立場・職業の人が集まり、日々活動しているそう。

恐る恐る「BUSHITSU」をのぞき込む筆者を、横浜自転車部の皆さんは温かく迎えてくれた。見ると、「BUSHITSU」の奥に変わった自転車が置いてある。

後ろに謎の物体が

見た目は普通の自転車なのだが、後部に何かが固定されており、しかも、後輪のチェーンと接続されているらしい。一体何なのか聞いてみると、

「コーヒーミルですね」

という答えが返ってきた。ハンドルを回して、コーヒー豆をひくための道具である。ペダルをこぐと、動力がコーヒーミルに伝わって、コーヒー豆をひけるようになっているようだ。筆者が訪問したときも、部員と思しき男性がペダルをこいでミルのハンドルを回していた。ちなみに、「なぜコーヒーなのか」という理由については聞き忘れてしまった。

しばらくぼーっと眺めていると、自転車をこいでいた男性が降車し、コーヒーのひき具合を確かめた。メンバーと「ひけたかな?」「まだ粗いね」という会話が交わされる。

「ひけたかな?」

「まだ粗いね」

その様子をぼーっと見ていると、「よかったらやってみます?」と声をかけられた。実は筆者は、自転車には少し自信がある。中学・高校の6年間は毎日自転車で駅まで通っていたし、大学生のころには房総半島を1周したこともあるのだ。

いざ乗車してこいでみると、意外と難しい! コーヒーミルのハンドルは繊細なため、こぐ力が弱くても強くてもうまく回らないのだ。自信満々のドヤ顔でペダルをこぎ始めた筆者は、なんとか豆をひき終わるころには変な汗をかいていた。

ひいた豆でコーヒーをいれていただき、1杯飲んでみた。苦労してひいた豆とあって、その味わいも格別だ。

無心でこぐ

ミルはこんな感じで接続されている

ちゃんとひけている!

いれていただいたコーヒー

5代目の意気込みを頂く

お茶部

「横浜自転車部」の「BUSHITSU」を出ると、斜め向かいに「お茶部」の看板を見つけた。中をのぞき込むと、和服姿の男性が緑茶をいれる準備をしているらしい。お茶の道具や、床に敷かれたござのせいか、先ほどとはがらっと雰囲気の変わった「BUSHITSU」だ。

変な汗をかいている筆者に、「お茶でも飲んでいかれますか?」とさわやかな笑顔で話しかけてくれたのは、「お茶部」部長の川合喜和さん。創業100年以上を数える老舗・川本屋茶舗の5代目だという。

実際に緑茶をいれながら、茶葉の種類やお湯の温度、おいしいいれ方のコツなど、懇切に説明してくれる川合さん。軽快に話しながら手際よくお茶をいれていく様子は、見ているだけでも楽しい気分になってくる。

川合さんいわく、緑茶の一番おいしいところは「最後の一滴」だそうだ。緑茶の独特なうまみや甘みは、「テアニン」という成分によるもの。この「テアニン」が、急須に残ったわずかなお茶に多量に含まれているのだそうである。

川合さんは、急須を勢いよく振って、しぼり出すようにお茶を注いでくれた。プロとしての意気込みを感じた瞬間である。

お茶について語る川合さん

最後の一滴まで入れる

渾身の1杯

そうしていれていただいた緑茶は、軽やかな草の香りとほのかな甘みが同居する、上品で心の落ち着くような味がした。

次のページでは、少し変わった部活を紹介する。