先日、東京・秋葉原UDXで開催された「After NAB ShowーTokyo2014ー」。映像制作ツールの最新版を日本で初めて公開するイベントであり、今回も放送局や制作プロダクションなどの撮影関係者が多数訪れた。

そのプレゼンテーションに合わせ、アドビ システムズ 米国本社からAdobe Creative Cloud映像制作ツール担当の3名が来日した。そこで今回は、編集ツール「Premiere Pro」やエフェクトツール「After Effects」などの次期アップデートの内容についてお話を伺った。

Adobe Creative Cloud映像制作ツールの担当者の面々。左から、パトリック J. パーマー氏、スティーブ・フォード氏、アル・ムーニー氏

4K放送の開始とアドビの映像制作ツール

今回対応してくれたのは、映像制作ツールの編集部門シニアプロダクトマネージャーのアル・ムーニー氏、ビジュアルエフェクト部門シニアプロダクトマネージャーのスティーブ・フォード氏、Adobe SpeedGrade&Adobe Media Encoder部門シニアプロダクトマネージャーのパトリック J. パーマー氏。各ツールのユーザーニーズに対し、きめ細やかな開発と対応を続ける映像のプロたちだ。

2013年6月のリリース以降、約1年で200以上の機能強化を行った「Creative Cloud」の映像制作ツール。映像制作関連の次期アップデートは、2014年上半期中を予定しているという。それまでの間にも、「Premiere Pro」はデヴィッド・フィンチャー監督の次期公開予定の映画「Gone Girl」の編集に導入されたほか、毎日放送やフジテレビなどの放送局、IMAGICAなど映像関連のポストプロダクションに導入され、日本でもスタンダードとなりつつある。

その大きな理由のひとつは、4K放送に対応した機能が、アドビ製品には多数盛り込まれている点だろう。6月2日にはスカパー!の「Channel 4K」にて4K試験放送がスタートしたが、放送データの納品方法もその重要な要素。その納品フォーマットとして非圧縮のDPX、圧縮ではソニーが提唱するXAVCが採用されているが、アドビ製品では昨年末の時点ですでにXAVCによる4K出力に対応済みなのである。次期アップデートでも、こうした4K放送をにらんだ機能が強化されているという。

2013年~2014年にアップデートされたCreative Cloudのツール一覧

同社の映像技術開発における重点領域

同社の映像製品について、開発の力点は、4K表現に関わる「ULTRA HD」、共同作業を効率化する「ファイルレスワークフロー」、配信形態やデバイスに依存しない作品再現の3つ。特にULTRA HDでは、4K以上の高解像度への対応、HFR(高フレームレート)への対応、色のダイナミックレンジの拡大を中心に研究が行われている。4Kの3840×2160や8Kの7860×4320など高解像度への対応とそこでの快適な作業の提供はもちろん、秒間60コマ以上でも滑らかな再生を促すフレームレート、広色域対応などの機能が順次アップデートされる。一般ユーザーからの目線では、Premiere Proは家庭用のビデオ編集ツールという印象もあるかもしれない。しかし、今やiPhoneから4Kカメラの素材まで扱えて、4K映像制作の最先端で活用されるツールへと変貌を遂げているのである。